上写真=前日会見に出席した大岩剛監督とU23イラク代表のシェナイシル監督(写真◎AFC)
敵将シェナイシルは「ドーハの悲劇」出場者
「ドーハの悲劇ですか? そういうことがあったのは知っています」
パリ五輪アジア最終予選、AFC U23アジアカップで準決勝・イラク戦を目前に控えたU-23日本代表の選手たちは、1993年、今から30年余り前に起きた「事件」について問われると、大体がそんな回答を捻り出している。
今から8年前、リオ五輪予選も同じくドーハで開催され、準決勝の相手は同じくイラクだったこのときは、むしろストレートに「知らないっす」という選手が多かった記憶もあるので、デジタルネイティブ世代になって逆に「知識としては知っている」「動画で観たことある」という認知が広がったのはあるかもしれない。
いずれにしても、2001年以降に生まれた選手たちで構成される今回のチーム、『ドーハの悲劇』はもちろん2002年日韓ワールドカップも、おとぎ話のようなもの。どうしても我々おじさんたちはイラク戦となると敏感になってしまうのだが、若い世代には関係ない話だということは強調しておくべきか。
「実際僕らは観てはいないので、あまり悪いイメージはイラクに対してない」
MF山本理仁(シントトロイデン)の答えは、偽らざる本音だろう。
ただ、イラクを率いるシェナイシル監督は、『ドーハの悲劇』に際して、実際にイラク代表の一員としてピッチに立っていた選手であり、やはり思い出深いものではあったようだ。
会見でこの件について質問が飛ぶと、記者が話し終わる前から満面の笑みを浮かべ、「聞かれると思っていたよ」といった表情でこう答えていた。
「いつだって日本とイラクの試合はハイレベルなものになるんだよ」
あの頃と変わらず、世界切符を懸けて戦う。そこへの思いは、時が移ろっても歴史を知る監督がしっかり持ち続けているように見えた。イラクの指揮官は日本についてこう語ってもいる。
「日本のチームが尊敬に値するチームであることは知っているし、素晴らしい選手たちがいて、準備も万端に整えている。誰もが最後まで自分の力を出し切らなければならない、そんな90分間が待っているだろう」
アジアカップでA代表が日本に勝っていることについては「まるで異なる大会の話だ」と一笑に付しつつ、「この大会で大事なのは結果なんだ」と日本戦へあらためて気持ちを込めてもいた。