U-24日本代表は12日、東京五輪に向けた最終選考の締めくくりとして、さらにチームの強化の一環としてジャマイカ戦に臨んだ。オリンピックエイジの選手たちは勝利を目指しつつ、自身の特徴をアピール。この試合で出し切れた選手は誰だったのか。

上写真=後半途中から出場し、ゴールを決めた上田綺世をチームメイトが祝福する(写真◎JMPA毛受亮介)

■2021年6月12日 国際親善試合(@豊田S/観衆4,029人)
U-24日本 4-0 ジャマイカ
得点:(日)久保建英、遠藤航、上田綺世、堂安律

画像: ■2021年6月12日 国際親善試合(@豊田S/観衆4,029人) U-24日本 4-0 ジャマイカ 得点:(日)久保建英、遠藤航、上田綺世、堂安律

久保、上田が2試合連続ゴール

 本大会のメンバー入りに向けた最終選考の場で、オリンピックエイジの選手たちは、とくに当落線上にいる選手たちは、結果を必要としていた。彼らからすれば、ジャマイカ戦は言わば、ラストチャンス。果たして、アピールに成功した選手は誰なのか。

 GKでは谷が先発し、後半開始から鈴木がプレーした。指揮官は2人に等しくチャンスを与えたが、アピールできたのは鈴木の方か。後方から積極的に声を出し、ビルドアップの局面では落ち着いて預けどころになり、足元の技術の高さを示した。守備機会そのものが少なく、守備面での評価は分かれるところだが、攻撃面で持ち味を発揮。一方の谷は、相手のクロスに前に出てしっかり弾くプレーを見せるなどしたが、日本が優位にゲームを進めたこともあり、特長であるシュートストップを見せる機会がなかった。この試合に限れば、判断材料は少なかったと言える。

 左CBは前半を町田が務め、後半開始からは瀬古がプレーした。町田は対人の強さを示し、瀬古はビルドアップで安定感を発揮した。後半途中から3バックにフォーメーションが変わったため、単純な比較はできないが、直前に追加招集された瀬古はパスの散らして何度も攻撃の一歩目になった。短い時間ながらも、持ち味を出したと言えるだろう。

 左サイドバックで先発した旗手は積極的な攻撃参加とパスセンスをアピールした。26分には見事に久保にスルーパスを通し、42分に遠藤が左斜め45度からゴールを決めた際には、遠藤の背中側を走って相手DFを引っ張り、フリーで打てる状況を作り出した。その旗手に代わって60分にピッチに登場した橋岡は、チームが酒井、吉田、瀬古の3バック採用に伴い、右のウイングバックでプレーした。鋭いクロスを放つなど積極性を見せている。相手の強度が下がってはいたものの、3日のA代表との試合でプレーしたCBだけではなく、右でも仕事ができることをアピールした。

 戦前、中盤左サイドの争いが注目されていた。つまり三笘か、相馬か。あるいはその二人ともがメンバー入りを果たすのか。この日、先発したのは三笘の方だった。しかし、前半は見せ場を作れず。自らドリブルで持ち込んだ11分の場面や久保のクロスをゴール前で受けた40分の場面でもシュートにつなげることはできなかった。そのまま試合を終えれば、アピール不足となるところだったかもしれない。だが、後半早々にピッチで自分を表現してみせる。相手をはがして中央をドリブルで持ち上がり、上田にラストパス。上田がGKの頭上を抜いてネットを揺らし、三笘はチームの3点目を導くアシストを記録した。

 その三笘に代わって60分に登場した相馬は、システム変更に伴い、左のウイングバックでプレー。積極的にドリブルを仕掛け、64分にはボックス左に進入してクロスを送り、堂安の得点をアシストした。もちろん他のポジションとの兼ね合いがあるものの、本大会でもシステムを併用すること考えれば、三笘と相馬の二人ともが選ばれることも十分にあり得るだろう。出場時間こそ違うが、残したインパクトの質は似ていた。

 3-4-2-1にシステム変更後、2シャドーには65分から食野、75分から三好が入った。ともに積極性を示し、ボールに対して鋭いアプローチを披露したが、1ゴールを挙げた久保や堂安をしのぐインパクトを残せたかと言うと疑問符が残る。出場時間が限られたことを差し引いても、この試合で当確を得るようなプレーは見られなかった。判断材料となるのは、これまでの取り組みと実績になる。その点を監督とスタッフがどう評価するか。

 前線では前田が1トップとして先発し、圧倒的な走力とアグレッシブなプレスバックを披露したものの、ノーゴールに終わった。代わって登場した上田は、U-24ガーナ代表戦に続き、ネットを揺らし、決定力の高さを誇示。後半、相手が足が止まり始めていたが、三笘のパスを受け、前に出てきたGKをかわすように決めたループシュートは見事だった。この日の結果とこれまでの実績から見ても、上田は当確ではないか。

骨格はある程度、見えてきた(横内監督)

 状況としては、難しいゲームだった。オリンピックエイジの選手たちにとっては本大会に向けた最終選考の場であり、一方で本大会行きが決まっているオーバーエイジの選手たちにとっては、連係を深める重要な機会。それでもチームとしてきっちり4-0で勝利を飾った。ともに勝利を目指す中で、OAはその強さと経験を還元し、オリンピックエイジの選手たちは特長を発揮すべく全力を尽くした。

「骨格はある程度、見えてきたかなと思いますが、まだスタッフと(森保)監督を含めて、(今回の活動を)見直しながら、考えていきたいなと思います。
 この活動の最初の頃に比べると、選手間でコミュニケーションを取れるようになった。日に日に増しましたし、試合ごとに増してきた。選手の特徴もだんだん把握して、噛み合ってきたと思います」

 田中がボールをつけろと最終ラインに要求し、旗手のオフ・ザ・ボールのランニングを得点者の遠藤が称え、吉田が瀬古に何度も指示を送り、ピッチ内のいたるところで声を掛け合い、コミュニケーションを取り合っていた。横内監督の言う通り、3日のA代表との試合時よりも、それらの光景は頻繁に見られるようになった。

「今回は長い活動で、選手たちがチームのためにと考えて活動してくれたことに感謝しています。この中で選考という作業があり、選ばれる選手と選ばれない選手がいる。ただ、みんながA代表候補の選手で、もちろん今回、オリンピックに選ばれなかったにしても、A代表はずっと代表であって、目指してほしい。選ばれた選手に関してはそういう選手の思いを自分の胸に刻んで戦わなければいけない」

 狭き門をくぐり抜けて、本大会のピッチに立つのは18人。OAの3人を除けば、わずか15人だ。メンバー選考前、最後の活動を終え、間もなく登録メンバーは決まる。指揮官は、今回の活動が五輪の先にもつながるものだったと強調した。

 横内監督が選考や評価について、試合後に明言することはなかった。手にした情報と材料を整理し、スタッフ間で協議して、間もなくメンバーを決める。五輪初戦の南アフリカ戦まで、あと40日。チームはメダル獲得に向けて、ここからさらに加速していく。

取材◎佐藤 景 写真◎JMPA毛受亮介


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