上写真=シャドーに入り、よりゴールを意識したプレーで攻撃をリードした鎌田大地(写真◎JMPA毛受亮介)
誰かが空ければ、誰かが使う
初戦のオランダ戦で右シャドーを務め、幅広い動きで攻撃を活性化させていた久保建英が負傷欠場したことで、第2戦のチュニジア戦は誰がピッチに立つのか、注目されていた。
森保一監督が選択したのは、代表ではここしばらくの間、ボランチでプレーしていた鎌田大地。その狙いはどこにあったのか。
「大地はここのところはボランチで起用していますが、今のチーム状況を考えたときにシャドーに回ってもらって、彼の良さを出してもらう、チームの攻守のコントロールをシャドー(のポジション)からしてもらうということを考えました。きょうも得点を決めてくれて、シャドーで起点になるだけでなくて、ゴール前に危険な所に入ってゴールを奪い、チームを勢いづける素晴らしいプレーでゴールも決めてくれたと思っています」(森保監督)
シャドーの候補者は他にもいた。鈴木唯人、後藤啓介、町野修斗(体調不良でベンチ外)、初戦でプレーした前田大然、さらに左ウイングバックの中村敬斗や右WBの堂安律も中央でのプレーが可能だ。だが、指揮官は鎌田を1列上げて左シャドーに起用し、前節途中出場の伊東純也と並べた。そもそも鎌田はアジア最終予選でシャドーを担っている。その点では、他のどの選手よりも代表でのシャドーの役割を理解している選手だった。
そしてこの鎌田のシャドー起用が、チュニジア戦において極めて重要だった先制点を導く。
「今日は基本的にボールを持てるとは思っていたので、ビルドアップの部分で関与するよりも、ゴール前で、危険な場所にできるだけ行けるようにと考えていました。(南野)拓実くんがいつもやっているようなことをできたらいいなと思っていて、その中で早い時間でゴールができて良かったなと思います」
代表では久々にスタートからシャドーでプレーしたが、鎌田はその役割を十二分に果たした。しかも先制点の場面では、ポジションを右に取って相手のマークを外し、冨安健洋からの縦パスを引き出して絶妙のフリックで上田綺世へ落とすと、田中碧、中村とパスがつながる間にゴール前の危険なエリアに進入。最後に中村からの低く鋭いクロスをニアで触ってネットを揺らしてみせた。
まずは左から右サイドへの機を心得たポジション移動。そこで冨安からの縦パスを引き出した。この時点で相手の守備者を一気に突破し、ボールを前進させている。加えて、フリックという判断である。ポジション移動で自身のマークを外し、さらにフリックを入れることで周囲の相手にアプローチするタイミングを与えなかった。
そして見逃せないのは、鎌田がポジションを1列上げたことに伴い、ボランチを務めた田中の働きだ。この場面では鎌田が空けたスペースにしっかり入り込み、フリックを受けた上田からボールを引き取っている。そこから左側にいた中村へ展開。中村が縦に仕掛けてクロスを送り、鎌田のゴールは生まれた。
田中は自身のプレーについて、こう振り返っている。
「最初の1点が、本当に自分たちにとってどれだけ大きかったか。相手が5―4―1の中で、早い段階で点を取れて、そこから無理に攻めなくてもいい状況もできたので、そこはすごくチームとして大きかったと思います。(先制点は)つなぎの中で綺世だったり、前の選手が落ちてきた時は、やっぱり前に出ていくのが自分の特長でもありますし、そこをうまく使ってもらえて、最終的にボックス内で、ああやって自分の前に大地くん入ってきたりだとか。正直、下からつなぐという意味では理想的な形で、右から左まで行って最後に中っていう、人数もかけられて点も取れたんで、そこはすごく良かったと思います」
誰かがスペースを空ければ、そのスペースを使う選手がいる。それをチームとしてしっかり共有しているのが、現在のチームの強みだ。さらに田中は前に出ていくという自らの特長もプラスし、何度もチャンスを広げた。
「連係連動」は森保監督がチーム作りにおいて常々、口にしてきたコンセプトだが、まさしく連係し、連動して生み出したのが先制ゴールだった。そしてそのコンセプトを「誰が出ても同じように」遂行することも、指揮官が強く求めてきたもの。
先制点で地力を示した日本はその後もゴールを重ね、W杯通算1000試合目という記念試合に4−0で快勝した。過去に一度しか勝っていない鬼門のグループステージ第2戦に、現在のチームが磨いてきた形を出して勝ち切った。日本の進化を示す勝利だった。
取材◎佐藤景【現地】

鎌田大地と田中碧で相手をはさみ込み、ボールを奪う。攻撃から守備への切り替えが早く、即時奪回の意識も徹底されていた(写真◎JMPA毛受亮介)
