上写真=先制アシストを決めた堂安律。後半から登場し、右サイドで存在感を示した(写真◎Getty Images)
今の日本は途中出場の選手がギアを上げられる
後半開始からピッチに入った堂安律は右サイドを活性化させた。前半は本来、サイドバックである菅原由勢が右ウイングバックを務めたが、守備面で安定感をもたらす一方で攻撃面を考えると、重心が下がった。その点を意識して、堂安はピッチに入ったという。
「ちょっと後ろが重く感じたんで。特に彼がサイドバックの選手なんで、付いていく意識が…それは大前提必要ではあるけど、それを捨てて(板倉)滉くんに渡しながら前に出ていくみたいなプレーが必要かなって思いながら外で見てました。
外で見ていたから、かなり楽に後半は入れましたけど、前半から出てたら苦戦したんだろうなと」
実際、チームの2点目は高い位置で攻撃に絡む堂安のパスから生まれた。ボックス右のスペースにボールを送ると、そこに中村敬斗が走り込み、クロス。最後は町野修斗がネットを揺らした。
「チームとして一つの決まりごとではある。ニアゾーンを使っていく。完全にハマりました。町野のゴール前での嗅覚も出た場面やった。前半でスピードが上がらないなという中でも、途中出場の選手がギアを上げれるのが今の日本代表の層の厚さ。一見、もっとやれたんじゃないかみたいに言われるかもしれないですけど、僕ら的にはギアを変えれる選手がいるのは非常に収穫のある試合だった」
先のガーナ戦も含め、今回の11月シリーズは多くの収穫を感じた試合になった。だが、前回のW杯を経験している堂安は言った。
「昨日、滉くんとか拓実くんと話したんですけど『自分のパフォーマンスがどうであれ、ワールドカップで勝ちたい』思いがあります。自分の理想としている姿じゃなくても、泥臭くてもチームに貢献したいのは全選手が持っている。そういうチーム作りをできているコーチングスタッフはすごい。調子いい、悪い関係なく、勝てれば全員調子いいと思っている。ワールドカップはそういう大会になる。調子いい悪い関係なく、チームに少しでも貢献できるようにプレーしたいというのは今から意識はしています」
その言葉からW杯にかける強い思いが伝わってきた。ドイツ戦とスペイン戦で同点ゴールを挙げても、堂安は全く満足できなかったという。
「僕は得点も取れたし比較的、良い思い出のあるワールドカップではあるけど、僕はそういう考えにはならなかった。得点がゼロでもベスト8以上にいきたかったという自分らしくない思いが出てきた。また新しい一面ではありますし、どんな状況でも、どんなプレーでもいい。もちろんそれがゴールかもしれないし、アシストかもしれないですけど。泥臭い守備でも、チームに貢献したいと思う」
大会本番まで残り7カ月。堂安は結果を出すために、貪欲に自身の成長を目指す。この日、Aマッチ通算100試合の節目を迎えた森保一監督のためにも。
「オリンピックの時から森保さんには育ててもらっているし、信頼も感じている。だからこそ、やらなくちゃいけないっていうハードル上がっています。年下の選手が多く入ってきている中で、特に責任感を感じながら…たぶん僕だけじゃなくて、拓実くん、滉くん、(遠藤)航くんも責任感は持っている。監督のために勝ちたい思いは、間違いなく全選手が持っているので。強い思いで今日ピッチに立ちました」
アウェーでドイツを下し、最終予選を最速で突破し、ブラジルから歴史的初勝利を挙げた。そして海外のトップリーグでプレーする選手が大半を占め、現在のチームは史上最強の呼び声も高い。
ただ、こうした事実だけではなく、チームの一体感や選手の勝ちたい意欲が、過去の代表と比べてトップクラスなのは間違いないだろう。堂安の言葉は、そんな現在のチーム状況をよく表している。
