上写真=右のシャドーでプレーした堂安律。積極的にプレーしたがネットを揺らすことはできなかった(写真◎毛受亮介)
ちょっと頭でっかちになっている
2試合連続無得点の日本は、パラグアイ戦では堂安律をシャドーに起用した。3−4−2−1のフォーメーションでは右のウイングバックを務めるケースが多かったが、今季、所属するフランクフルトで開幕から絶好調。久保建英が左足首のケガにより欠場したこともあるが、6試合で2得点4アシストを記録するアタッカーの決定力を生かす狙いも、そこにはあっただろう。
だが、その狙いは奏功しなかった。オン・ザ・ボールはもちろん、オフ・ザ・ボールでも積極的な姿勢を見せたものの、直接的にゴールに絡むことはできなかった。
「久々のシャドーやったんで、少し違った感覚で試合しましたけど。やっぱり日本代表のことを組織的に分析されてきてる中で、組織的に守備をされてしまうと、前回の9月からどうしても停滞する試合が最近続いてると思う」
本人も攻撃の停滞を感じていた。中を閉めて、ボールを外回りに誘導するパラグアイの守備陣に手を焼いたのは事実だろう。
「やっぱりシャドーで出ている自分にとっては相手が組織的に守っている中で、個で破壊しないとなと思いながらも、なかなかそこで打開することができなかった。自分の中で悔しさと自分に対してのイライラがある、募る試合でしたけど、そこは僕だけじゃなく、もっと自由にできる選手がいても逆にいいんじゃないかと。いろんな戦術を落とし込んできている中で、もう少し自由さとかワクワクするプレーとか、見てて楽しいと思ってもらえないと、自分たちもやっていて楽しくないので、そこの課題はね。そういう楽しいプレーがゴールに近づくと思うし、それが少し欠けているというか、停滞する時間が最近、長いんじゃないかなと思います」
この日、キャプテンマークを巻き、堂安と並んでプレーした左シャドーの南野拓実も同様に、チームの役割から少し離れて、個人の特長を生かすことが必要だと指摘していた。ベースの型を理解し、それができた上で、その先ある応用が効いてくる。そのあたりの考え方をチームで共有することが今、必要なのかもしれない。
「自分たちがウイングバックとシャドーのところでいい立ち位置を取った中で、外には出させてOKという感覚は(相手に)あると思うし、前半……後半も何回か(伊東)純也くんとの関係でチャンスを作れたところはありましたけど、そこがチャンスならもっと積極的に使っても良かったと思う。あともう一つみたいなのがちょっと多かった。コンビネーションで2人は絡んでるけど、3人目がなかなかいないとか、俺と純也くんが絡んだ後の(小川)航基の奥がないとか。(中村)敬斗と拓実くんが絡んだ後の俺が奥にいられないとか。3人ぐらいの関係がないとどうしても厳しいというのはありました」
チームとして2ゴールをスコアしたものの、その確率と効率を挙げるために必要なこととして、堂安は3人目の動きの重要性を指摘した。
「僕はシュート、足を振ってないナンボやと思っていたので、振れる位置をずっと探しながら、航基に当てたあととかも探していましたけど、結果的に流れの中でのシュートはゼロやったんで、そういう意味では不完全燃焼です」
FIFAランキングの上位国やワールドカップ出場決定国と対戦する中で、アジア予選では感じなかった複数人が絡むコンビネーションの必要性や、個で局面を動かす重要性を痛感させられている。次戦の相手であるブラジルは、文字通りの世界のトップグループに位置する強豪国。9月からの3試合で感じたものが、もっともっと必要になる対戦相手と言えるかもしれない。
「チームとしての戦術はある程度、提示してくれているし、その中でやっぱり個の打開力が必要だと思う。僕たちが組織的にプレーして、向こうが組織的にやっているってことはやっぱり守れちゃうので、そこから一つ選手のアイディアが必要だと思うので。そういうのはスタッフが提示できるものじゃなくて、選手がひらめきを出すものだし、そういうのが見ている人も楽しいと思う。特に次にやるブラジルなんかはまさにそういうチーム。やっぱりゴール前で違いを作れるし、だから見ていて楽しいし。(チームとして)いろんな戦術を落とし込んでくれているので、ちょっと頭でっかちになっちゃってる部分があるのかなとか。自分も今日そうですけど、『ああ、もっと自由にやらないとな』と思いながらやっていたんで。そこはバランスですけど、チームのルールがある中でチームのが提示してくれている中で変化を加えれたら」
基礎を踏まえた上で、応用を。
ブラジル戦、さらにその先のワールドカップ本大会でも、日本が結果を出すための重要なテーマと言える。
取材◎佐藤景
