9月5日、北中米ワールドカップ・アジア最終予選の初戦で日本は中国に7-0と圧勝したが、その最後のゴールを決めたのが久保建英。ゴールへの意欲をたぎらせ続けた結果だったが、自らの成長を「大人」という言葉で表現しているのが興味深い。

上写真=久保建英は伊東純也の「復帰弾」もアシストして、真っ先に抱きついた(写真◎小山真司)

■2024年9月5日 北中米W杯・アジア最終予選1節(観衆52,398人@埼スタ)
日本 7-0 中国
得点:(日)遠藤航、三笘薫、南野拓実2、伊東純也、前田大然、久保建英

「正解じゃないときもある」

 遠藤航が、三笘薫が、南野拓実が、伊東純也が、前田大然が決めたのならばなおさら、自分も決めたかった。「途中から得点の掲示板に僕の名前がないなと(笑)」。久保建英の左足がうなる。

 90+5分、左サイドで伊東純也がボールを収めると、内側でサポートした。そして「純也くん!」と叫んだ。伊東が思わず「タケの声がすごかった」と笑ってしまうぐらいの迫力でボールを引き出すと、ペナルティーエリアの中に入って左足でたたいた。豪快な7点目。

「ファーストタッチで相手の前に入れたので、余裕を持ってシュートを狙うことができました」

 パスをくれた伊東と喜びのハグをして、大トリを飾った。

「伊東選手も『本当だったら打とうと思っていたけど、タケだから』って言ってくれたので、それはうれしかったですね」

 これは、77分のアシストの「返礼」だったかもしれない。右サイドで開いて受けてから内側の伊東に預けると、そのまま伊東が左足で放ったシュートがDFに当たってゴール左に吸い込まれた。うれしいうれしい復帰弾をお膳立てしていたのだ。

 最終予選の初戦で最初にスコアを動かしたのも、この人の左足だ。12分、左CKを届けて遠藤航の頭にぴたりと合わせた。何気ないキックにもテクニックが詰まっている。

「あのニアのボール、僕得意なので、けっこう確率的には高いんです。できるだけ上から落ちるように意識はしていましたけど、(遠藤が)あれだけ完璧にフリーで動いたら、多少ボールはラフでもたたけるかなと思って。あとは遠藤選手が少し待ってから飛び込んでくれたのでよかったかなと思います」

 キックオフから別格だった。この日は3-4-2-1のフォーメーションで右のシャドーに入り、ウイングバックの堂安律と楽しそうにクルクルとポジションを入れ替えながら、右サイドを制圧した。

「最初の15分から20分ぐらい、ボランチ2人がちょっとだけ左に流れがちで、僕も本当はボールに関わりたかったですけど、右で待つことで堂安選手を1人にしないことは意識していました。あとは逆に、ボール持ったときにこっちが厳しかったら(左サイドに)三笘選手がいたので簡単にあっち側に戻すとか。1回、意識しすぎてパスカットされましたけど。いろいろ今日、考えることがあって、頭はちょっと疲れていましたね」

 相手とのレベルの差は歴然だったが、神経を研ぎ澄ませることは怠らず、だからいろいろなことが見えていた。

「大人になったというのが一つと、余裕もあるので、僕が僕がっていうんじゃなくて、いろんな選手の良さを出そうということを、今日の試合に限ってですけど、意識していました」

「良くないかもしれないですけど、代表に慣れてきたというのと、みんなギラギラしているので、そのギラギラをうまくまとめるじゃないですけど、みんなのギラギラがいい方向に行くように。僕もめちゃくちゃギラギラしてますけど、みんな僕も含めこれから伸びしろがある選手ばかりなので、一緒にやっていて楽しいというのはありますね。前よりも楽しめていると思います」

 人間味が自然にあふれて出てきて、プレーヤーとしての格もまた一つ高めた、とでも言おうか。

「内心は俺が、俺が、ですけど、『俺が、俺が』が正解じゃないときもある。チームが勝つために何が最適解か、僕が考えたのが最適解じゃないときももちろんありますけど、できるだけ僕が最適解だと思うプレーをいつもするようにしています」

 本大会の出場枠が4.5から8.5に広がって、圧巻の7ゴールで最高のスタートを切ったけれど、まだ始まったばかり。なんといってもこれは、ワールドカップ最終予選なのだ。

「みんなライバルだと思っていますし、でもライバルが活躍してくれないとこっちも困りますし、みんなの活躍は素直にうれしい。それが日本代表の強化につながる。苦しいときにチームを救いたいなとは思いますね」

 何が起こってもおかしくない決戦の渦中で、チームが困難に直面するときはきっと来る。そのときに久保がどう振る舞うのか。それがそのまま、日本の真の実力を映す鏡になるだろう。


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