上写真=GKチームでトレーニングする前川黛也(写真◎佐藤景)
ドーハの悲劇があったから今の日本がある
「セットプレーのところの弱点を突かれて、やっぱり詰めが甘いところをやられた。そこは修正して臨まないと、また同じ目に遭うかもしれない。しっかり修正して臨みたい」
ベンチから試合を見つめていた前川は、あらためてアジアナンバー1を決める舞台の厳しさを感じていた。
「どの失点でもやっぱりキーパーは関与してしまいますが、改善に向けた反省は、(試合に)出ているキーパーだけじゃなくて、出てないキーパーもしないといけない。ああいうところで失点してしまったのは、いろんな選択肢だったりプレッシャーだったりがありますが、そこでの判断を、いろいろ修正していかないといけない。しっかり修正して無失点で終われるように、チーム全体、キーパー全体で取り組んでいかないと」
ベトナム戦の1失点目は左CKからニアで相手に触られて、ボールが鈴木彩艶の頭上を越え、ゴールに吸い込まれた。この失点に関してはキーパーからすればノーチャンスだっただろう。ただ、2失点目は鈴木が一度は弾いており、仮に今後、同様の場面が起こったときに防ぐことができるかもしれない。
失点シーンについて前川にGK目線でどう見たか。まずはニアで触れて決められた1失点目に関して。
「どの戦術にもやっぱりストロングポイントとウィークポイントはあるもので、ああいう形でベトナムはニアに速いボール入れたんですけど、日本の選手をつり出して、スペースを空けてやってきて、あそこは相手もデザインしていた。ただ1回そういうことがあったので、修正は絶対できると思う。次はないようにすることが一番なのかなと思っています」
そして2失点目。
「最初のフリーキックの時点でファーでキーパーが触れないところだったり、ファーにやっぱり大きい選手を置いていて、そこでの折り返しというところで、(ニアの選手も)その折り返しの準備で走り込んできていたので、相手の出だしが早かった。あの失点はキーパーチーム全体で反省するとして、セカンドボールも想定してフィールド(の選手)がいかにああいう折り返しに対して修正できるかというところも大事だと思います。そこも含めてチーム全体で考えていかないといけない」
鈴木が弾いたあと、即座に詰めていたベトナムの選手たちの様子を見れば、そこに相手の狙いがあったことは明白だ。日本の選手たちは結果的に反応が遅れてしまった。ファーサイドに大柄な選手を置き、折り返し、そしてシュートのこぼれを狙ったベトナムにまんまとやられたわけだ。
先発した鈴木、ともにベンチに座った野澤大志ブランドン、下田祟コーチも含め、今大会に臨んでいるキーパーチームでしっかり話し合ったと前川は明かした。
「今までの大会のレベルと違ってどんどん他のチームのレベルも上がってきています。引いて守ってカウンターだけじゃなく、しっかりコンパクトな中でショートカウンターだとか、つないでくるチームが増えている。ただそこは、日本もいろいろ苦しみながらやってきたという強みがあるので、跳ね返す力はあると思う。慢心せずに自分たちのスタイルを貫くだけだと思います」
次戦の相手はイラク代表。ドーハの悲劇の相手国。前川の父である元日本代表GKの和也氏は、あの試合のベンチにいた。
「正直、あんまりわかんないんですけど、その場に立ち会ったっていうのは聞いてたんで、お父さんに。そういうことがあったからこそ今の日本があると思っているので、その人たちに感謝して頑張りたいと思います」
イラク戦はもちろん、アジアのてっぺんを目指すチームの一員として、どんな形でも前川はチームに貢献するつもりでいる。
取材◎佐藤景