上写真=練習ではつらつとした動きを見せていた谷口彰悟(写真◎佐藤景)
慣れ親しんだ場所での代表活動は不思議な感じ
およそ1年前、カタール・ワールドカップを終えた谷口彰悟は、川崎フロンターレからカタールリーグのアル・ラーヤンSCに移籍した。ヨーロッパを目指す選手が多い中で、中東のクラブでプレーすることを選んだ。
「もちろん全てが全て、そこに向けてという感じではなかったですけど、(アジアカップの)イメージは持っていました」
決断に際して、最たる理由ではなかったものの、カタールでアジアカップが開催されることは意識していたという。日本代表として、自身が日常的にプレーする国で戦う姿を頭の中で描いていた。
果たして谷口は再び日本代表のユニフォームをまとってカタールで戦うことになった。
「慣れ親しんだ場所でアジアカップが開催されるというところで、また日本代表としてこの地でトレーニングできていることでちょっと不思議な感覚もありつつ、楽しみな気持ちもかなり強いです」
3日目の全体練習を終え、そんな感想を口にした。そして、決して平坦な道のりではなかったこの1年を振り返った。
「僕自身も初めて海外でのサッカー生活というところもあったし、もちろん簡単な1年ではなく、いろんな発見もありました。その意味では(外に)出てみて本当によかったと感じています。いろんな経験だとか、自分の特徴が何なのかとか、いろんな引き出しを増やせる時間にはなったので」
日本に留まっていたら体験できなかった環境の中で、谷口は心身ともに強くなった。その成長を代表で示していきたいという。町田浩樹や渡辺剛らワールドカップ後に台頭し、いわば突き上げられる立場となったが、「競争は大歓迎」とポジション争いにも前向きだ。
「若い選手が出てくるというのは日本サッカーにとってはすごく大事だし、出てこないといけないと思っています。でも、だからといって簡単に自分のポジションを渡したくはないですし、そこはやっぱり競争。その競争の中に今、自分が身を置けているのはありがたいこと」
冨安健洋、板倉滉、伊藤洋輝らと切磋琢磨してきたが、そこにまた前述の通りライバルが加わった。いずれも谷口よりは年下の選手たちだが、彼らから受ける刺激が、自分が奮い立たせ、さらに前進する原動力になっている。
「自分の特徴は何なのかとか、自分にできること、自分にしかできないことを理解しています。ある程度、経験からくるものもありますけど、いろんなことが今、頭の中で整理できてきている。年齢を重ねたからこそだなとも感じています。準備の仕方もそうですが、経験を生かしながらやっていくことが、今の自分の強みになっている」
キャリアを重ねたからこそ。そして中東のクラブでプレーするからこそわかったことがある。今回のアジアカップは、それらすべてを示す格好の機会。
「個人的なところで言えば、やっぱり多くの試合に絡んで結果を出していきたい思いが強いです。チームとしては優勝以外は価値がないと思っていますし、そこに向けてどれだけ自分が貢献できるか。自分自身でもそこは楽しみな部分ではあります」
全体練習後に行われていたクロス対応の守備練習では、渡辺剛と町田浩樹を両サイドに置き、谷口が中央に入る3バックを形成する場面もあった。そもそも備えていた統率力、戦況を把握する能力、ボールを積極的に動かして敵陣にスキを生み出す力をカタールでプレーする中でブレることなく磨いてきた。
谷口は自らの価値を、今大会で示すつもりだ。
取材◎佐藤景