久保建英が堂々と日本の攻撃を引っ張った。10月17日のテストマッチでチュニジアを2-0で下した勝利の中心に、背番号20がいた。トップ下のポジションにこだわらずに、相手の嫌がる場所で積極的にボールを受けてさばき、この日の2つのゴール両方を演出した。

上写真=久保建英が気持ちよさそうにプレーして、何度も何度もチャンスを演出した(写真◎Getty Images)

■2023年10月17日 国際親善試合(@ノエビアスタジアム神戸/観衆26,529人)
日本 2-0 チュニジア
得点:(日)古橋亨梧、伊東純也

「ゼロで締めることができた」

 試合直後のフラッシュインタビューで、第一声はこうだった。

「チーム全体として最後、(ワールドカップ)予選の前にゼロで締めることができたのはすごく良かったと思いますし、これからチームの活動に戻って、また僕自身も代表に選ばれるように頑張りたいなと思います」

 無失点で終えた守備のこと、そして代表での立場は常に確約されていないという危機感についてまず言及したのだ。圧巻のパフォーマンスとなった、自らの攻撃のアクションのことではなく。

 それが逆に、充実感を示しているかもしれない。言わずもがな、だからだ。言葉に頼らずとも、プレーがあまりにも雄弁だった。

 この日、森保一監督から与えられたのは、4-2-3-1システムの2列目の中央のポジション。「トップ下」と呼ばれるが、その枠にはとてもではないが収まりきらない鮮やかなプレーの連続だった。まさにフリーマン。

 スタートは中央だが、レアル・ソシエダでプレーしているのと同じ右のエリアに流れて、右サイドハーフの伊東純也を走らせたり右サイドバックの菅原由勢を使ったと思えば、今度は左に寄って左サイドハーフの旗手怜央や左サイドバックの中山雄太とボールを交換してチャンスを作る。

 そして、この日の2つのゴール両方を導き出している。

 43分の先制ゴールでは、遠藤航からのパスを受けた守田英正の視野に入ってボールを引き出すと、襲いかかってきた相手を体でがちっとブロックしながら旗手に預けた。旗手のパスが相手に当たってゴール前にこぼれ、古橋亨梧が決めるのだが、中央をテンポよく割った攻撃を演出した。

 2点目となる69分の一発では、落ち着いてアシストだ。左サイドで町田浩樹の縦パスを浅野拓磨がフリックして左裏のスペースへ。ここに久保が走り込んで中を見ると、ニアに走り抜ける守田、中央に入っていった上田綺世を見ながら、さらに逆サイドからフリーで入ってきた伊東純也にマイナスに送って、右足のシュートを導いた。

「お客さんもやっぱり僕たちが点を取ることを期待して会場に来てくれていると思います。いまのところはチームみんなでその期待に応えられているので、非常にいい流れが来ているのかなと。みんなが期待してくれるような日本代表になっているのかなと思います」

 その象徴的な存在が、久保である。神出鬼没の動きで、あらゆる場所でボールを引き出して味方を動かし、自分ももう一度危険なエリアに進入して受けて、チュニジアの守備陣を壊しにかかった。

 72分に南野拓実がトップ下に入ってくると久保は右サイドに回り、82分に橋岡大樹と交代するまで躍動した。ピッチを去るときに贈られた万雷の拍手は、まさしくマエストロ(指揮者)への称賛だった。

 名手がひしめく2列目のポジション争いはなおも熾烈だが、それをも糧にしてどこまでも伸びていきそうな勢いだ。


This article is a sponsored article by
''.