日本代表は20日、大阪・パナソニックスタジアム吹田でペルー代表と対戦する。先発メンバーの顔ぶれは大幅に変わると森保一監督は明言。その上で前回のエルサルバドル戦に続き、形は4−1−4−1(4−3−3)で臨むことになりそうだ。ここでは予想メンバーとその狙いを整理する。

上写真=森保一監督はエルサルバドル戦と同じ形でペルー戦の臨むことを示唆した

引き出しを増やす取り組み

 ペルー戦も先日のエルサルバドル戦同様に4−1−4−1(4−3−3)で試合をスタートさせそうだ。18日の練習で行った11対11のミニゲームでは、メンバーや形を入れ替えたり、途中でフリーマン1人を組み込んだりと内容を変化させたが、上記に示した図が1本目の構成。この基本ポジションと顔ぶれでペルー戦に臨むことになりそうだ。

 前日会見に登壇した森保一監督は、「今のところは同じような形で入って、というシステム上の形から、今日の練習を見て最終的には決めますが、大幅に選手を変えながら試合に臨みたいと思います」と最終決定は前日練習を見た上で決めるとしながらもエルサルバドル戦と同じ『形』で試合に入ると話し、ただしメンバーを大幅に変えるとした。

 攻撃時に3人で組むフロントラインは、右から伊東純也、古橋亨梧、三笘薫の編成になるだろう。注目は右の翼を担う伊東で、エルサルバドル戦で「温存」されたウイングが先発を飾りそうだ。3月シリーズのバングーナガンデ佳史扶や今回の森下龍矢など代表に初招集されたサイドバックが練習で『伊東を体験』し、そのスピードと強度の高さに驚きの声をあげていた。今回のシリーズでも練習の中で鋭い切り返しと瞬間的に前に出るスピードをたびたび披露。対峙する選手を何度も抜き去っていた。指揮官が「サイドが日本の強み」と話しているが、左の三笘とともに右の伊東も大きな強みになっている。

 センターフォワードは上田綺世が負傷によりエルサルバドル戦後に離脱したこともあり、古橋になることが濃厚だ。前田大然は今シリーズの練習で左サイドで起用されていることが多く、浅野拓磨はエルサルバドル戦で右サイドでプレーしており、練習では1トップに入ったケースがあったものの、今回は前の試合で途中出場から得点も記録した古橋により多くのプレー時間を与えるのではないか。

 左ウイングは第二次森保ジャパンが3月にスタートして以降、全ての試合で先発を飾ってきた三笘が務めそうだ。エルサルバドル戦でも前半のみのプレーに留まっており、疲労の心配もなさそう。この試合でも先発としてプレーするだろう。三笘は古橋とのコンビネーションについて、「ポストプレーヤーというよりは裏の抜け出しが強いタイプなんで、僕がなるべくフリーで受けて、より見てあげるというか、前を常に意識することで動きやすいと思う。なので顔を上げることの重要性だったり、フリーで前を向く重要性がより高くなる」とコメントした。

 豊田から大阪に移動して17日に行った6対6+2人のフリーマンという練習メニューでは、攻撃から守備に切り替わったところで、前線の3人が相手にプレッシャーをかけるプレーの意識づけを行っていた。その際の組み合わせはやはり伊東、古橋、三笘。ちなみにもう一方のチームは中村敬斗、浅野拓磨、前田大然だった。

 中盤の逆三角形は旗手怜央、鎌田大地が左右のインサイドハーフとして並び、その背後で遠藤航がアンカーを務める形が濃厚だ。今度の相手であるペルーは4−2−3−1が基本的な形で、積極的な守備が持ち味。日本の陣形と中央でがっちり噛み合うことになるが、ピッチ上でカップリングができてもそれぞれ上回ることができれば、チームとして優位に立てる。

 中盤中央の構成の中では、ボールを引き出すことに長けた旗手の起用がポイントだろう。鎌田と遠藤の実力はすでに知るところ。日本の武器である両翼の力を十全に引き出しつつ、前に圧力をかけられる4−1−4−1の陣形の中で、リンクマンとしての役割を担うその存在は重要だ。

 エルサルバドル戦の16分のプレーが印象的だった。一度、アンカーの守田英正の脇に降りてCBの谷口彰悟とパス交換したあと、スルスルと前線へ。その間に守田が谷口からボールを引き取り、内側にポジションを取った三笘へパス。旗手は三笘の開けた左サイドのスペースへ走り込み、クロスを供給した。ボールは上田や走り込んだ堂安律にわずかに合わなかったが、その機動力とボールを循環させる持ち味がよく出ていた。ペルー戦でも旗手には同様の働きが期待される。

 また、右インサイドハーフの鎌田が持つシュート力は守から攻への切り替えの中で前を向けたときに発揮されるケースが多い。ワンタッチでボールの方向を変えられる旗手が横にいることで、前向きの鎌田がボールを持つ状況も増えるのではないか。そんなインサイドハーフの2人の特徴をアンカーの遠藤が引き出せるかどうかも、ペルー戦の見どころになるだろう。

 最終ラインは右から菅原由勢、板倉滉、谷口、伊藤洋輝の並びになりそうだ。エルサルバドル戦では左サイドバックの森下龍矢を上げて、残りの3人による3枚回しで相手のプレッシャーをはがし、ビルドアップしていく形が見られた。ペルーのプレスのやり方にもよるが、今回も前に人数をかけられる日本の陣形の特徴を生かすなら、アンカーが頻繁に最終ラインに下がってビルドアップに関わる
のではなく、一方のサイドバックを前に上げて、残り3人でビルドアップする形を試したいところ。2CB+GKによる3枚回しでもいいが、6月シリーズの練習ではたびたび、2CB+1サイドバックでボールの動かし方を確認していた。

 伊藤洋が左サイドバックで出場し、スライドして3枚で回す形になると、所属するシュツットガルトで3バックの左でプレーするのと同じように振る舞うことも可能だ。武器とする正確なロングキックを攻撃陣に届けることもできるだろう。伊東への対角のパスからビッグチャンスを生むことも期待できる。

 GKは中村航輔が務めることになりそうだ。試合2日前の11対11のミニゲームでは中村だけが4本通してゴールマウスに立ち続けた。シュミット・ダニエルと大迫敬介は交代しながらだったことを踏まえれば、ペルー戦は久々に中村が先発を果たしそうだ。

 前回のW杯アジア最終予選では終盤から4−1−4−1(4−3−3)で戦いながらW杯本大会は4−2−3−1を基本とした。強豪国相手に前に人数を割く形が『有効』ではなかったからだが、今回の活動では有効とすべくトレーニングを積んでいる。

「今のチームづくりの中で、ワールドカップを見据えてなのか、アジアでの戦いを見据えてなのかという区分けはしていません。チームのコンセプトの浸透と、われわれの現在のレベルアップをどうしていくかということにフォーカスしています。目標はもちろんありますけど、まずはわれわれが常にレベルアップすることが大切だと思いますので、目の前の試合に向けて、今のわれわれの力を上げていくということで積み上げていこうと思っています」(森保監督)

 むろん、どんな相手にも通じる万能のシステムなどない。重要なのは状況に応じて戦える引き出しを増やすこと。その点から今回は、このシステムの習熟に努めているのだろう。引いた相手を崩し切り、強豪相手にしてもゴールを奪うために、ペルー戦でもトライを続けることになりそうだ。

取材◎佐藤 景

画像: 3月のドイツ戦でペルーは途中からシステムを変更。状況によっては日本も4−2−3−1など途中から形を変える可能性がある

3月のドイツ戦でペルーは途中からシステムを変更。状況によっては日本も4−2−3−1など途中から形を変える可能性がある


This article is a sponsored article by
''.