7大会連続7回目の出場となったカタール・ワールドカップで、日本が世界に誇ったのは三笘薫の鮮烈なパフォーマンスだっただろう。後半に登場して、一気に局面を変えてしまうドリブルは痛快極まりなかった。しかし、足りないものだらけだという事実を突きつけられたという。ここからの4年間、チームを勝たせる絶対的な存在になる。

上写真=日本が世界に与えた衝撃は、三笘薫の存在。痛快なドリブルで大きなインパクトを残した(写真◎Getty Images)

■三笘薫カタール・ワールドカップ出場記録
・11月23日 グループE第1戦/○2-1ドイツ=57分から出場
・11月27日 グループE第2戦/●0-1コスタリカ=62分から出場
・12月1日 グループE第3戦/○2-1スペイン=後半から出場 1アシスト
・12月5日 ラウンド16/▲1-1(PK1-3)クロアチア=64分から出場

「責任は負おうと思って手を挙げた」

「名乗り出たことに後悔はないですし、そこに対するメンタルだったり、技術のところは足りないなと感じました」

 三笘薫が「足りない」と繰り返した一つが、このことだった。名乗り出た、とはもちろん、クロアチア戦のPK戦でのこと。立候補制でキッカーを募る方法で、三笘は2人目だった。

 最初のキッカー、南野拓実が止められ、続く三笘も左に蹴ってコースを読まれてはじかれた。3人目の浅野拓磨は決めたものの、最後に吉田麻也も止められ、3人が決めたクロアチアに蹴落とされた。

 普段はあまり喜怒哀楽をはっきり示さないクールな三笘が、試合直後に号泣するのだから、その悔しさはどれほどのものだったか、想像に難くない。

「PKに入る前に責任は負おうと思って手を挙げたので。今後、必ずまた蹴っていい局面が出てきます。そのときにそれが自分にとって必要になってくるというか、絶対糧になると思います」

 責任を取る覚悟が、未来の自分を強くする。

戦える選手になりたい

 自らに「足りない」と突きつけたものは、ほかにもある。

「やっぱりスタメンでチームを勝たせる存在になりたいということは、より感じましたし、自分がチームを勝たせたと思える試合がすべてでないといけないと思っています。今回、ウイングバックでいつもと違った役割でしたけど、選手としての幅も含めてもっともっとチームを引っ張れる存在にならないといけない」

 4試合すべてで途中からピッチに現れて、一気に流れを変えてヒーローになった。ドイツ戦の堂安律の同点ゴールは、左からドリブルで入って南野に送った縦パスが起点になったし、世界中の注目を浴びたスペイン戦の「1.88ミリ」のアシストから、田中碧の逆転ゴールを生んだ。

 クロアチア戦でも延長に入って105分、カウンターで滑るように運んでゴールに向かい、緩急の変化を利用してさらに加速してから、右足で強烈なシュートを放った。クロアチアの選手が5人も集まって体を投げ出してコースを消しにきた慌てぶりは、三笘への特別な警戒を如実に示していた。

 その活躍を、先発メンバーの一員として披露して、勝利に直結する男になる。それが次の目標だ。

 再認識させられたのは、やはり結果。

「ゴール、アシストをもっと取って、チームを勝たせる存在にならないと、とは感じました。世界のトッププレーヤーは1人で局面を打開して、決め切る力があると思うので、そういうところを身に着けて、もっともっと守備もできるようになって、走れるようになって、戦える選手になりたいと思います」

 そのためにはやっぱり、いまのままでは足りないのだ。

「特に最後のクオリティーのところや、そこにまで持っていく力は、全然足りないなと思いました」

 世界最高峰の舞台で、足りないものがいくつもあることをはっきりと見せられた。

攻撃的にサッカーをしていく

 初めてのワールドカップを終えて、未来の姿がはっきり見えるようになった。「チームワークは世界のチームの中でも一番」と確信するグループの中に身を置いて、足りないものをすべて埋め、さらに大きく強固なものにして、たどり着くべき理想像。

「これからは守備的な戦いではなく、自分たちが攻撃的にサッカーをしていくことが代表に必要だなというのは、皆さんも感じていると思いますし、選手の中でも感じています。確率論ではないですけど、確率を上げるサッカーというのは必要だなと思います」

 ドイツ戦もスペイン戦も相手の攻撃を1失点で抑えることができたから、後半の逆転劇に結びついた。だが、やはり守備から入って相手を封じ込めることがスタート地点。それを逆転させたい思いがある。

「個人のレベルをアップするしかないと思います。選手が集まって、でも戦術のところは最後なので。ということは一人ひとりの個人のレベルの集合体なので、それぞれがもっと脅威的になれば、そこから崩れていくのがサッカー。1対1をもっと強くしていくところと、フィジカル的に上げていくことが自分はもっと必要だと思います」

 まさに自らに突きつけた「戦える選手になりたい」の言葉の源がこれだ。三笘薫はこれから4年で、もっと速く、もっとテクニカルに、もっと勝負を決める男になって、この舞台に帰ってくる。


This article is a sponsored article by
''.