上写真=W杯を知り、国を背負う意味を知ったと語った鎌田大地(写真◎Getty Images)
「W杯で初めて知れたし、感覚が変わった」
実際にW杯の舞台を踏んで初めて分かることがある。
出場機会はなかったものの、今大会が4度目のW杯になる川島永嗣は「人生が変わる場所」だと話す。それは周囲の見方も自らの立場や心構えも含めて。
昨季のフランクフルトでUEFAヨーロッパリーグに優勝し、ヨーロッパで評価を高める鎌田も、初のW杯で思いを新たにした一人だ。
「正直、今回のワールドカップ予選、本大会までは自分は信頼されている立場じゃなかったし、外されたりもしていた。国を背負って戦う意味を今回のワールドカップで初めて知れたし、そういう部分で少し自分の中で感覚が変わったなという感じがしました」
「多少なりとも悔しい選手もいるし、活躍した選手はうれしいだろうし、みんなが全く同じ気持ちっていうことはあり得ないと思います。ただ、そういうのを一切見せずにチームのためにみんなやっているっていうのが、このワールドカップだと思う。本当に自分たちは自分たちの今ある全てをこのワールドカップに全て注ぎ込んだと思うし、だからみんなすごいなと思いました」
ゴールが決まればチーム全員で喜び、失点すれば、経験したこともないようなプレッシャーにさいなまれる。どんな優勝経験国も初出場の国もそれは変わらない。そしてもちろん勝利を手にすれば、国中が喜び、逆に敗れれば、多くの人が失望する。国を背負って戦うにはタフでなければならず、相当な覚悟も必要だ。
それでも他では感じられない、やり甲斐がある。
「基本的に(代表に対する)向き合い方は変わらないと思いますけど、クラブでの時間のほうが長いし。ただ、4試合出させてもらって、次のW杯は自分、30歳ですけど、次の大会はもっと責任感を持って自分が引っ張っていきたいと思っているし、できるだけいいクラブでやって試合にしっかり出て、また日本人の価値を高めたいと思っています。なのでクラブに戻って頑張っていきたいと思います」
鎌田は、試合直後のミックスゾーンで取材に応じ、将来をしっかり見据えてプレーしていくと語った。
今大会の鎌田に対する期待値は大きかった。現在の海外組の中で最も実績を残している一人であり、所属するフランクフルトでは得点という目に見える結果も残している。日本代表では守備的な役割を求められることが多かったものの、得点チャンスがなかったわけではない。本人もそのことは自覚していた。
「最低限やるべきことはやったと思いますけど、僕の、何て言うんですかね、期待値的には間違いなく得点を取ってほしかった選手だと思うし、そういう部分をみんなが期待していたと思うんで。そういうことができなかったのは自分の実力不足。なので、クラブに戻って、次のワールドカップまで4年ありますけど、いいところでプレーして成長していけたらと思います」
ドイツ戦もスペイン戦もフォア・ザ・チームで役割を全うした。それは誰もが認めるところだろう。ただ、鎌田にはチームを勝たせる働きが期待されていた。チームが劣勢にあるときにはとくに。クロアチア戦は75分に酒井宏樹と交代でベンチに下がった。延長もPK戦もピッチサイドから見守ることになった。
「選手なので120分間ピッチに居続けたかったし、PKももちろん僕は蹴りたかった。ただ、今まで常にこういう試合でフランクフルトだとピッチに立っていて、去年もPKを蹴りましたけど、初めて外から見て、蹴れないというのは自分で責任を取れないし、外で見ているのは無力だと思う。ピッチの上に立ち続けたかったなという気持ちはありますね」
もっと絶対的な存在に。チームを勝たせる存在に。それが次の4年間で鎌田に求められることだろう。
「4年後は自分にとって最後のワールドカップになると思う。この4年間はそこを目指しながらやっていきたいなというふうに思います。ただ、やっぱり今回は間違いなく自分が実力不足だったし、もっと本当に自分が、もちろんクラブは自分にとって大事なんで、自分の目指しているところで、まだプレーが今回のワールドカップのタイミングではできていなかったので、次は自分の目指しているようなクラブでしっかりポジションをつかんで、W杯に臨めるようになっていけたらいいなと思います」
4年後、必ずもっと強く大きな存在になって帰ってくると、鎌田大地は誓った。