上写真=カタールW杯本大会に向けていい準備ができていると語った浅野拓磨(写真◎Getty Images)
ロシアを離れた瞬間からここしか見ていなかった
ミックスゾーンに表れた浅野拓磨の表情に、不安は一切見られなかった。9月10日のブンデスリーガ第6節シャルケ戦で右ヒザの内側じん帯を断裂。一時はカタールW杯出場を危ぶまれたが、「問題はないです」をきっぱり言い切った。リーグ中断前最後の試合、今月12日のアウクスブルク戦も出場しなかったものの、すでに『準備』はできていたという。
「チームの全体練習には合流していましたし、最後の試合は、本当に出る準備をしていました。最後、監督からは、チーム(=ボーフム)の状況がいい中で復帰した自分とメンバーを変えるというときに、今はみんな調子がいいから、じゃあ誰を変えるかというところで『今回は無理しないでいいよ』と外されました。最後、(自分は)行く準備をしていましたけど、監督の意向も納得はできたんで」
本人の説明によれば、チーム事情により「無理しなくていい」とトーマス・レッチュ監督の判断に納得ずくで従ったとのこと。「じゃあもう、僕はこっちに向けて、いい準備をしようと切り替えましたし、その分、いい準備はできたかなと思います。チームの試合に合流するよりも、合流して10分・5分試合に出るよりも、最後の最後まで自分の練習もできましたし、いい状態でこっちに入れたかなと思います」。W杯に向けて準備万端であると強調した。
浅野にとってカタールW杯は絶対に上がりたい舞台だ。ケガを負った直後に、ポジティブな思考に切り替えられたのも強い思いが持つがゆえ。
「人事を尽くして天命を待つじゃないですけど、僕がやれることはいま振り返ってもやってきたと思います。これ以上やれることはないぐらいやったつもり。あとは本当に森保監督の判断に委ねるしかなかったし、ケガという状況もありますけど、最後の最後まで僕の中でも、五分五分かなっていうのは思っていましたけど、自分の中でやれることをやったらワールドカップまでには良い状態を作れると感じていました。ある意味、発言とか、僕はもう、そういうアピールしかできなかったので、いやもう『治しますよ』っていうアピールも含めて、やれることはやってきた。それが結局、今につなががってるかなと」
ポジティブな発信で自分を振り立たせた部分もあっただろう。前回のロシア大会はバックアップメンバーだった。その経験は貴重だったとことあるごとに口にしてきたが、その貴重な経験は当然ながら悔しさも伴ったもの。本大会に出られなかった悔しさを原動力に、この4年半を駆け抜けてきた。
「ロシアを離れた瞬間から僕はここしか見ていなかったので、それが4年半続いてきただけであって、別に今になってその思いが強くなったということではない。常にここしか目指していなくて、ここを目指すためにやるべきことをその瞬間その瞬間でやってきた。それができたからこそ、自分はここにいると感じています。強い気持ちは常に、この4年半持っていました。それがすべてかなと思います」
17日のカナダとのテストマッチでアピールし、いい形で本大会を迎えたいとも浅野は言った。心配無用。浅野の表情からは、その四文字が読み取れた。
取材◎佐藤 景