日本代表は6日、FIFAランキング1位のブラジルと対戦し、PKによる1失点のみで0-1で敗れた。強豪国に対して日本はどんなトライをしたのか。そしてどんな結果を手にしたと考えているのか。森保一監督の前日会見、試合後のコメントから指揮官の意図を読み解く。

上写真=戦況を見つめる森保監督(写真◎JMPA小山真司)

ボールを食われて負けた歴史

 これまで積み上げてきたものを出す。それが戦前に森保一監督が話したブラジル戦のテーマだった。果たして結果は、0-1。スコアは僅差であり、FIFAランキング1位の相手に善戦とも映るが、その数字以上に力の差があったのも事実だろう。シュート数は4対18で日本が大きく下回り、枠内シュートにいたっては1本に終わっている(JFA発表では1本)。日本は、攻め切れなかった。

「選手たちは我慢強く、粘り強く戦いつつ、攻撃の姿勢を忘れずにゴールに向かっていくところを見せてくれました。それでも結果が伴わなかったので残念に思います。惜しいではダメなのは分かっているつもりですが、選手たちが今、自分たちにできるベストをやり続けてくれたことは、われわれの未来の勝ち点、勝利につながっていくと思っています」

 結果を受け止めた上で、収穫もあったと指揮官は試合を総括した。ボール奪取後に安易に蹴り出さず、プレッシャーの中でビルドアップを試み続けた。この日のチームの狙いをやり抜いた。

「攻撃全体として、なかなかこじ開けさせてくれないのは現実的なところでしたが、ビルドアップでいえば、前半の入りから(相手の)プレッシャーの中で、やり続けることによって、後半はかなり相手のブロックの中に入っていけたし、アタッキングサードにも入っていけた。選手たちが途中でやめていたら防戦一方の試合で終わっていた。相手も守備に回らないといけない時間をつくり、我慢してトライすることでわれわれの形に持っていけたと思う」

 実際、クリアに逃げる場面は限られた。守備から攻撃に切り替わる際に、ボールを動かし、前進させる意図をピッチで示した。ただ、精度が伴わない場面も散見した。CBの吉田麻也の縦パスやフィードをカットされてピンチを招いた。田中碧から堂安律へのパスはトラップの瞬間に突かれ、カウンターを浴びることになり、相手のPKにつながった。もちろんそれらはトライした上で起こったことであり、ポジティブにも受け止められるが、ピンチにつながったのもまた事実だった。

「ハイプレッシャーで(相手が)来るときにどう外すかについては昨日のトレーニングで立ち位置等々を確認したが、形ではなく、相手よりどれだけ次のプレーを予測して動き出せるかというところが必要。今日の試合では攻撃でも守備でもそれが必要になってくると、選手には話していました」

 前日練習は冒頭15分のみの公開だったものの、4日の練習はフルオープンだった。その中で印象的だったのは、タッチ制限を設けたミニゲーム。素早い攻守の切り替えからワンタッチで密集を抜け、ボールを前進させる感覚を養っていた。

「後半に相手のプレッシャーがきつくなったとき、前半からやり続けたことで、逆に外せるシーンも出てきた。選手たちはまだまだ伸びしろを持っていて、ブラジルのようなレベルの高い相手と戦うことで、試合の中でレベルアップしていける、成長していけるところを見せてくれました。FIFAランクひとケタ台のチームとはなかなか試合をできませんが、今日のような経験をたくさん積めば日本の選手もレベルアップできる」

 これまで強豪国と対戦した際に、日本は自陣からボールを運べず、パスがひっかかっては連続攻撃を浴びるケースが多かった。だからこそビルドアップを磨き、ボールを持つ時間を生み出すことが必要だと指揮官は考えている。前日会見の席でも森保監督は、その点について言及していた。

「相手はボールを奪った瞬間に即座に奪い返しに来ると思う。そのプレッシャーを受けて、もう1回ボールロストして攻撃されるのか、プレッシャーを回避してゴールに向かっていけるのか、ボールを保持できるのかが試合展開に大きな影響すると思います。奪った瞬間、われわれが守備をしながら攻撃に移るときにプレッシャーをかいくぐっていけるかをチームとして共有しながら戦いたい」

 その発言からも、日本にとってビルドアップがブラジル戦の大きなテーマだったことがうかがえる。こうも指揮官は言った。

「守備から攻撃に移った時のプレス回避ができるかだと思います。オリンピックであったり、世界の強豪とのこれまでのワールドカップの試合であったり、強化試合であったり、(攻守が)切り替わった時に相手に食われてしまうのか、プレッシャーを回避できるのかというところで、試合結果が変わってきた過去の歴史がある。そこで一つ、予測力を早くして、判断を早くして、攻撃に移っていけるようにしたい。ワールドカップで結果を残すためにも予測力をどれだけ上げられるかがテーマになるので、明日の試合(=ブラジル戦)もそれを意識して臨みたい」

 予測は何度か成功し、そして何度か失敗した。まだ世界ランキング1位のチーム相手に、安定的にボールを前進させるほどの予測力と技術を持たない。アジア最終予選途中からで日本のビルドアップを格段に改善させた守田英正を加えた3センターハーフで戦う姿も見たかったが、今回、それは叶わなかった。

 はっきりしたのは、現状のビルドアップの水準では強豪には通用しないということ。指揮官はブラジル戦後、強豪国から勝ち点を奪うために重要なポイントを聞かれ、こう答えている。

「攻撃力だと思っています。ボールを奪ってから前に運ぶ、相手のプレッシャーを外す部分はもっともっと上げていかないといけない。選手たちは今できるトライをしてくれて、ほぼクリアで逃げることはなかった。(今後は)ボールを保持しながら相手のブロックに入っていけるように攻撃力を上げなければいけないと思っています。われわれがボールを持っているときに、相手はプレッシャーをかけてきますが、相手の圧力よりも早く良いポジションを取って、ボールをつなげるところを上げていかないといけない。守備に関しては、1失点したが、ボールロストしてからの切り替えや、最後のところで粘り強く止めるという部分、強豪相手にやらないといけないところは見せてくれた。それを継続しつつ、攻撃力を上げられるようにトライしたい」

 日本が今、目指しているのはW杯でベスト8以上に進出することだ。いかに大きな目標を掲げているか、ブラジル戦で改めて知ることができたはずだ。「ブラジル戦で見つかった課題を(6月シリーズの)今後の2試合で修正するのがテーマでもある」と吉田キャプテンは語っていた。

 本大会まで残り5カ月あまり。国内組中心で臨むE-1選手権を除けば、代表活動は14日まで行われるこのシリーズと、9月しかない。今回の結果を踏まえて、いかにチームを向上させていくか。指揮官の手腕が問われる。

取材◎佐藤 景


This article is a sponsored article by
''.