これまで日本代表のレギュラー・センターバック(CB)だった吉田麻也と冨安健洋が同時にケガで不在という緊急事態を、Jリーグ屈指のCBである谷口彰悟とシャルケで評価を高める板倉滉が救った。

上写真=安定した守備と球出しで勝利に貢献した谷口彰悟(写真◎小山真司)

代表のコンセプトの中で2人は表現してくれた

 今回の予選では、これまで守備の要としてチームを支えてきたCBの吉田麻也と冨安健洋がそろってケガで不在となったなか、誰がその代わりを務めるのか注目が集まっていた。候補は4人。谷口彰悟、植田直通、板倉滉、そして追加で招集した中谷進之介だ。

 はたして森保監督がピッチに送ったのは谷口と板倉だった。

 起用の理由は一つではないだろうが、コンディションと組み合わせの面から2人がベストだと判断したようだ。

「中国戦に向けて、国内組はオフ明けで、海外組と合流後、2回の練習の中でどうやって絵を合わせていくか。非常に難しかったですけど、選手たちがしっかり準備してくれた。短い期間の中でも頭を切り換え、しっかり代表モードにしてくれて、良い準備ができました。CBのところがポイントだったと思いますが、日本には良い選手がたくさんいて、これまでの活動の中で谷口も板倉も見せてくれていました。これまでの活動の経緯、トレーニングの中で彼らの調子の良さを見て自信を持って起用を決めました。(板倉は)ヨーロッパで、そして谷口は勝ち続けなけなければいけないチームの中でやっていて、その経験が生きたかなと。2人とも川崎F出身なので、息は合っていたかなと思います」

 3人で構成された逆三角形の中盤に長らく川崎Fでプレーしていた田中碧と守田英正がいることで、谷口は臆することなく持ち味である縦パスを通した。板倉もまた同じだ。中国が中を締めてタイトに守っても、パス交換で相手の陣形を揺さぶり、道ができればスッとボールを前につけていった。後半は相手がより緊密なブロックを敷いたために2人とも鋭く敵陣に差し込むパスは減ったが、攻撃を円滑にする球出しには安定感があり、チームのベースとなっていた。
「非常に落ち着いて試合の入っていましたし、ビルドアップのところ、相手を止めるディフェンスのところでもチームをコントロールしながら、かつ個の局面で相手を上回る部分、うまさと強さを見せてくれました。2人は最終予選に初出場でしたが、今までに素晴らしい経験をしてきています。普段やっていることに自信をもって、今日の試合に臨んでくれたと思います」

 板倉は2020-21シーズンにオランダのフローニンヘンでCBとしてプレーし、クラブMVPに輝く大活躍を見せ、今季から加入したシャルケでも堂々レギュラーを張り評価を高めている。そして谷口は過去5シーズンで4度J1を制した川崎Fのキャプテンであり大黒柱。Jリーグベストイレブンにも3度選ばれる日本屈指のCBだ。そうした実績と経験が中国戦にしっかり生かされていたと指揮官は2人を称えた。

 相手が引いて構えたこともあり、最終ラインの押し上げもスムーズにできていた。その結果、ボールをロストしても選手の距離感がよく、狙い通りの即時奪回から2次攻撃を仕掛けられた。「息が合っていた」と感じる理由として森保監督は「一つのボールの動きに対して、状況に対して、お互いのイメージが合っているところを今日の試合の中でも見させてもらった。そこは、昨日のトレーニングや一昨日のトレーニングの中でも、2人はプレーの確認をしながら、この試合に向けて準備してくれいました。今、彼らができるベストなことをお互いの関係で表現してくれました」と説明。また、吉田・冨安コンビとの違いについては、異なる2人が出ているので、その特徴がピッチで出るのは当然としながら、「戦い方としてはチームのコンセプトのもとで戦ってくれています。個々の特徴の違い以外はチームとしてのコンセプトを同じような形で表現してくれた。違いというよりも、高いレベルで、代表のコンセプトの中で谷口と板倉の2人が表現してくれたと思います」とプレーぶりを評価した。

 ビルドアップの際の位置取りや縦パスには足もとに自信を持つ2人ならではの特長も見られた。吉田、冨安の不在は痛手だったものの、勝ち点3をしっかり得たという事実とともに、CBの層の拡充という意味で中国戦は日本にとって極めて重要な90分になった。


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