上写真=メキシコ戦へ向けてトレーニングするシュミット・ダニエル(写真◎JFA)
結果を出し続けるしかない
そもそもプレーできるのは一人だけ。ベンチスタートなら、先発した選手にアクシデントでもない限り、ほぼ出番はない。そう考えれば、ゴールキーパーは最も競争の激しいポジションと言えるかもしれない。もちろん、代表でも。
10月シリーズも11月シリーズも、代表のゴールキーパーは同じ顔触れだった。そして10月は2試合のうち1試合目は権田修一がゴールマウスに立ち、2試合目はシュミット・ダニエルが務めた。ともに無失点に貢献したが、シュミットは言った。
「あまり守備機会がなくてシュートもこなかったので、良いパフォーマンスだったかどうかは判断しづらいですが、ボール受けてさばくとかそういう部分ではチームの助けになったかなと思ってます」
本人が言う通り、確かに守備機会は少なかった。そしてまた本人が言う通り、「ボールをうまくさばいた」。ビルドアップの面では、川島永嗣も含めた3人の中でも頭ひとつ抜けている印象を受ける。
プレッシャーがかかる状況でも、短いパスをDFにつなぐのではなく、3列目や2列目に意図あるボールを出していた。文字通りの攻撃の第一歩となった。シントトロイデンに加入した当初、指揮官の高い要求によって、そのスキルは磨かれていったと本人は明かす。
「フィールドのどこにスペースあって仲間入ってきたら出す。人を探すのではなくスペースを見つけておいて、入ってきたら出すことを求められた」
人にパスを出すのではなくスペースに出す意識を持ち、実際にそれができるスキルを備えるGKは、そうはいない。
代表で定位置をつかむために必要なことを問われて、「結果を出し続けるしかないと思っています。チームの勝利に貢献することがいちばん大切だと思うし、そうするには試合に出なければいけない。試合に出るためには練習でできるだけシュートたくさん止めて、キーパーとして当たり前のところをやっていくしかない。どこをアピールすればとか考えずにやってます」と語った。
リスペクトする川島、権田との切磋琢磨して、己を磨き、持てるものを練習からすべてを出す。いや、出し切る。日々、100パーセントでプレーすることでしか道は開けないことを知っている。
「前回、代表で試合に出してもらったときは、10カ月ぐらい実戦から遠ざかっていた。その中で出してもらってしっかりパフォーマンスできたことで自信になり、そのあとの所属チームでの試合出場につながったと思う」
前回の代表戦で得た手応えをクラブに持ち帰り、その後のプレーにつなげた。今回は所属クラブでの研鑽を、代表に持ってやってきた。シュミットの中で好循環が生まれているのかもしれない。今回も代表合宿の2試合目に、出番を得るか。17日のメキシコ戦はあらためて、自らの持ち味と成長を示す機会になるかもしれない。