日本がパナマと対戦した11月13日の国際親善試合。停滞気味の前半から一気に流れを引き寄せたのは、後半から入った遠藤航の存在だった。ブンデスリーガの絶好調男が代表に持ち込んだのは「シンプル」という極意だった。

上写真=決勝PKは遠藤航(中央)、久保建英(右)、南野拓実(左)と渡って獲得した(写真◎JFA)

■2020年11月13日 国際親善試合(リモートマッチ/@オーストリア:スタディオン・グラーツ・リーベナウ)
日本 1-0 パナマ
得点:(日)南野拓実

「トライアングル」が3-4-3の色に

 チームは誰か一人のものではないが、この日ばかりは「遠藤航の日本代表」と言いたくなるほど、出色の出来だった。

 前半はベンチで見守り、後半からピッチへ。すると、ドイツのブンデスリーガでトップクラスのボール奪取能力と素早い球出し、的確なポジショニングで中盤を制圧し、たちまち日本のボール回しのリズムをスムーズにしてしまった。

 キーワードは「シンプル」だ。

「前半は上から見ていて、前につけられるチャンスはあるなと思っていました。(南野)拓実のところや2シャドー(三好康児、久保建英)が空いているな、と。ボランチ2人が横並びになったほうが受けやすいかな、動かしやすいかなとイメージしていて、相手が落ちたのもありますけど、いいポジショニングを取れたし、タケ(久保)もうまく間に入っていたのでシンプルにつけたというところですね」

 この日は3-4-3システムで臨んでいて、右センターバックの植田直通から中央でボールを引き出すと、目の前に久保が見えた。そこに縦パスを鋭く突き刺すと、久保が前を向いてさらに前へ、南野が受けたところで倒されてPKを獲得した。これを南野自身が決めた61分のゴールが決勝点となった。上のコメントはこの一連の流れについての解説だが、受けては縦に差し込み、奪っては散らし、と攻守の連結部分でその実力をいかんなく発揮した。

 あれだけパスを通せるのは、味方というよりは相手を見る、というコツがあるという。

「味方のポジションを見ているけれど、相手がどうやってプレッシャーかけてくるかに注意していますね。例えば今日は3バックで、直通が持ったときに逆サイドのボランチの僕がフリーだったりして、相手の立ち位置を見てポジションを変えるのは大事なことで意識しています。(PKにつながったシーンも)いいポジションを取れれば、僕がタケにつけたところは特に難しいことをしているわけではないですし、味方の位置も相手の位置も把握しておくのが大事です」

 所属するドイツのシュツットガルトでは絶好調で、そのリズムを代表にも持ち込んだ格好だ。

「シンプルにブンデスリーガでやっていたプレーですし、ブンデスリーガよりプレッシャーを感じなかったので、いいポジショニングから味方がどこにいるのかを見てシンプルにつけていました。裏にも出せましたし、それは引き出しとして出していきたいと思います。裏へのパスと足元へのパスの使い分けははっきりしていきたいので、シンプルに良さが出せたと思います」

 難しいことをする必要はなくて、そのために準備を怠らない、という真理を、遠藤のプレーが教えてくれる。

 3-4-3システムだからこそのビルドアップの「色」を出せた感触もある。

「3バックの方が後ろとの距離感が良くなるので、シンプルにはたいてまた間を取って、ということができます。また、シャドーが中に入ってくると3バックのサイドの選手がシャドーと僕の両方を見ながらビルドアップできるので、相手はそこが嫌なのかなとも思います。相手がシャドーを消してくれば自分のところでフリーになって、ターンしてサイドチェンジしたり縦に入れたりできるので、そのトライアングルという関係性が3バックだと出しやすいのかなと思います」

 まさしく、日本代表に遠藤あり。


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