上写真=鈴木が大迫を超えるための第一歩が次の試合になるかもしれない(写真◎JFA)
「背後を突く動きは通用する」
どうしても、話は「ポスト大迫勇也」になる。
今回の親善試合のために呼ばれた選手の中で、FW登録は2人だけ。1人は大迫で、もう1人が鈴木武蔵だ。長く日本の最前線に立ち続けてきた大迫を脅かす選手の登場が、日本代表の未来をつなぐと言われてきた。その競争の真っ最中。
鈴木はこの夏、北海道コンサドーレ札幌から電撃的にベルギーのベールスホットへと移籍した。「夏にオファーをいただいて、これが年齢的に最後のチャンスだと迷いなく決断しました」という覚悟で海を渡った。
与えられた背番号は10。早くも5試合でプレーして2試合はフル出場、ゴールも二つ記録している。手応えはいい。
「最初はなかなかチームメートに認めてもらえませんでしたが、ゴールを重ねるごとにチームメートも監督も信頼してくれるようになりました。ベルギーリーグでも動き出しや、背後を突く動きは通用すると思っていて、能力の差もそこまで感じていません。だから、もっとゴールを決めなければいけないと思います」
中でも自信を得ているのは、動き出しの工夫のところ。
「動き出しの部分はすごく手応えを感じています。強いディフェンダーに真正面から分かりやすい動き出しをしていたら確実に潰されますからね。試合中も練習も相手の状況を見て、いま食いついてきそうだというときには背後を突くし、来なければ足元でもらうということは常に考えて動き出そうとしています。クロスに対しても真っ当に入ると跳ね返されますから、相手の逆を取ったりと常に意識しています
実際に第6節のシャルルロワ戦で決めた移籍後初ゴールはその賜物だった。左サイドに大きく開いてから、味方がその内側で持ったときにDFの背後を取るように斜めに中に入っていくことでボールを引き出すと、右足でワンタッチで巻くようにしてゴール右隅に送り込んだ。
「海外に来てよりハングリーになれました」と自分の心の変化を感じ取っている。だから、こんな言葉も力みなく素直に出てくる。
「なんとしても活躍して、1トップの座を脅かしたい気持ちがあります。結果を残して定着を望んでいます」
偉大な先人である大迫へのリスペクトの気持ちはもちろん大きい。
「大きな存在ですし、僕とはまったく違う特徴で、長年代表で1トップ張っているだけあって能力は申し分ありません。僕はそれに寄せるというよりは、僕なりの特徴で勝負したいです。自分は自分だから、人それぞれの特徴を存分に出して、自分なりのプレーで結果を出して危機感を与えたいんです」
ダンスのようにくるりと回るポストプレーからのターンや、ゴール前での一瞬の動きによる得点という大迫のスタイルは、真似できるものではない。自分は自分。鈴木は裏に抜け出す感覚とスピードでこれまでとは別の「1トップ像」を作るつもりだ。
「ポストプレーや味方を生かすプレーは素晴らしい。でも、僕にはないものですから、そこにこだわりすぎずに自分の特徴で勝負します。そうじゃないと、良さが出せなくなるので」
10月9日のカメルーン戦では特に前半、攻撃に出られない時間が続いた。理由は様々だが、南野拓実はその一つとして「裏に飛び出してスペースを狙う選手がいても良かった」と話している。鈴木の特徴そのものだ。
大迫はクラブの事情ですでに代表を離れているから、13日のコートジボワール戦に鈴木が出場するのは確実視されている。
「代表のユニフォームは特別なものだと感じていますし、日本にいたときよりもさらに、これを着ているだけではなく、結果を残してやってやるぞという気持ちになりました」
「結果を求めてやってきましたし、フォワードとしては得点は必要です。まだまだ代表で試合数も結果も残せていないから、さらに大迫選手に危機感を与えられるようにやっていきたいと思います」
「昔よりもゴールに対する意識は確実に変わりました。1点取って満足していた自分が昔はいましたけど、いまは満足できなくて2点3点と多くの得点を取りたいという思いがずっとあります。練習の紅白戦やミニゲームでも負けたくない気持ちがより一層高くなっている。そこが良くなった部分ですね」
次の試合もアフリカ勢だ。「身体能力の高い」という枕詞が常につくが、その強さや速さはやはり圧倒的で、カメルーン戦でも日本は苦しめられた。
「ベルギーリーグでも屈強のセンターバックと毎試合戦っています。対人が強くてヘッドも強いセンターバックが必ずいます。でも、どの相手でもウイークポイントはあるんです。空いているスペースを探していれば、自ずとチャンス生まれますから」
コートジボワール戦は日本のナンバー24の仕掛けに注目して見ると、面白そうだ。