上写真=熊谷紗希は無失点に貢献。短い時間だが、ボランチでもプレーした(写真◎Getty Images)
■2022年6月24日 国際親善試合(スタラパゾバ/セルビア)
セルビア女子 0-5 日本女子
得点者:(日)植木理子、猶本光、宮澤ひなた、千葉玲海菜、成宮唯
「リスクは最終ラインでケアします」
5つのゴールとクリーンシート。なでしこジャパンのヨーロッパ遠征第1戦は上々の結果に終わった。
セルビアとのアウェーゲームで、28分に植木理子がヘッドで決めて先制すると、後半にゴールラッシュ。62分、猶本光が右からのクロスをヘッドで押し込み、76分には宮澤ひなたがスピードで抜け出してGKとの1対1を確実に仕留め、81分には千葉玲海菜が右からのセンタリングをファーで詰めて代表デビューのわずか2分後に初ゴール。最後は88分に、GKがはじいたこぼれ球を成宮唯が蹴り込んだ。
守っても、セルビアのパワフルな攻撃にさらされる時間もあったが、バランスよく冷静に対処。失点をゼロに抑えた。
池田太監督が就任して最初の遠征が、昨年11月のヨーロッパ。このときはアイスランドに0-2、オランダに0-0と1点も奪えずに帰国した。チーム状況も対戦相手も違うから単純比較は難しいが、それでもヨーロッパでのアウェーゲームでまた新しい姿を見せたのも事実。11月にはボールを奪いに出てひっくり返され、スピードで振り切られて失点したが、その反省は生かされていた。
「11月のときとは相手が違いますし、ひっくり返されたあとのスピードも違いますけど、全員の共通認識でひっくり返されても戻るべきところに戻れたと思います。そこは最終ラインは徹底していました」
手応えを語ったのは熊谷紗希だ。右から清水梨紗、熊谷、南萌華、宮川麻都の4バックの集中力は途切れなかった。
「ただ、セカンドボールが拾えなかったりしたところもあって、そこは次に向けて修正しないと。行くんだったらしっかりとボールに行く。そして、行くことで生まれるリスクは最終ラインでケアします」
この2試合は、およそ1年後のワールドカップに向けて、たくさんのことにチャレンジできる貴重な機会。自身も85分からはボランチに上がってプレーした。
熊谷は「この日にやるかどうかは想定していなかった」と笑うが、以前からボランチでもプレーする準備ができていることを池田太監督と話し合っていたという。「私があそこでできるのは、つぶし役になること。対人の強さを生かしてどれだけボール奪取できるか」。池田監督も「彼女のプレーの幅を広げて、チーム力を上げるため」と、新たな守備のオプションにトライすることができた。
熊谷は2月、アジアカップの準決勝で中国にPK戦で敗れたあと、「このままでは世界で勝てない」と厳しい言葉を発していた。それ以来、初めての対外試合となるセルビア戦を終えて「リスペクトはありながら、ワールドカップで戦う相手がこのレベルかどうかは別の問題ですが」と前置きした上で、全力でトライできたことを収穫に挙げた。
「対外試合で外国の選手と戦う中で、自分たちの戦うすべは一人ひとりが見いださないといけないと思います。それを常に求めながら、代表でできる時間はワールドカップまで1年と長いようで短いので、大切にしようと働きかけています」
次は27日(現地時間)のフィンランド戦。この大事な90分で、できることをもっと増やすつもりだ。