上写真=隅田凜は今大会2試合目で初出場。90分を戦い抜いて、3-0の勝利の一員になった(写真◎AFC)
「スイッチを入れるパスを」
ちょっと浮かない顔の隅田凜がいる。
なでしこジャパンは女子アジアカップでミャンマーに5-0、ベトナムに3-0と連勝を飾り、勝ち点を6としてベスト8進出を決めた。隅田は初戦は出番がなかったが、2戦目はフル出場。ボランチとして全体を引き締めて、勝利の一員となった。
にもかかわらず、首をかしげる。
「自分自身も久しぶりのアジアの戦いで、普段やっているやり方ともメンバーとも違って難しいところもあったんですけど、前回の遠征(11月のオランダ遠征)でできなかったことやろうと入りました。結果的に勝ててよかったけど、自分自身は前半の戦い方に課題が残りました」
第1戦から先発メンバーを8人代えて臨んだゲーム。コンビネーションの構築を本番のピッチの上で戦いながら進める必要もあって、特に前半は攻めあぐねた。ベトナムは重心を低く構え、ほぼマンツーマンで守備に回ってきて、外すのに苦労を強いられた。
「前回の遠征では自分自身で予測して奪う良さがあまり出せなかったので、今回の大会で出していきたいと思っていました」
相手の意図を読んで奪う、の繰り返しでリズムを作りたかったが、前半ははまらなかった。
「相手が引いてくる中で、後ろの作りの部分にセンターバックが参加したときに、自分たちボランチがどこの位置を取るかで迷ってしまうところがありました。そこは早く気づいて、自分自身でポジショニング修正できたかな」
相手が引いてくれば、こちらは最終ラインもフリーになって前に出ることができる。それはメリットだが、一歩間違えば渋滞を引き起こすことになる。それをピッチの中で回避できたことは収穫だった。
この2試合は明らかに日本の地力が上だったが、次は韓国が相手。そしてノックアウトステージに進めば、一発勝負の緊張感もあってさらに強度の高いゲームになる。逆に言えば、この2試合のようにラインを下げてゴール前を固め、マンツーマンで守備重視の戦いを選ぶ、というチームが減ってくることにもなる。前に出てきてくれれば、後ろが空く。
「背負ってボールを受けるよりも、間合いを取っていい状態で何でもできるようにすることで、選択肢は増えると思います。まずはいいポジションを取って味方も相手も見える位置に入って、そこから縦パスや、一つ外してスルーパス、スイッチを入れるパスを出していきたいですね」
むしろ、相手が真っ向勝負に出てくれる方が、隅田には戦いやすいのかもしれない。
「奪いにいったり狙いにいったりする守備は、この2戦とは違うやり方でできると思います。逆にそういうほうが楽しみで、どうやって奪うか試す楽しみがあります。試合に出たら積極的に出していきたい」
池田太監督が強調する「奪う」のチームコンセプトを地で行くボランチ。奪ったらパスも大事なのだが、思い切りゴールも狙いたい。ベトナム戦では開始早々の6分に、ペナルティーエリアの中にスルスルと入り込んで成宮唯からパスを引き出し、迷わずシュートを放った。右に切れてしまったが、3列目から前に踏み込むプレーは相手にとってはやっかいだろう。
「遠目からでも狙っていかないと相手も出てこないので、チャンスがあったら狙っていきたいですね」
相手に恐怖心を与えるためにも、その右足のパワーショットをもっと見たい。