「サッカーマガジン雪印メグミルクONLINEクリニック2020」は、本来、今年の5月に開催される予定だった全国最大規模の女子サッカー大会「サッカーマガジン雪印メグミルクカップ」の代替イベントとして、コロナ禍でも全国の女子サッカー選手のレベルアップの機会や特別な思い出を作ってあげたいとの思いから開催されたもの。
本イベントは11月1日(日)に第1回目が開催されており、第2回目の開催となったこの日も第1部の「ワンテーマクリニック」、第2部の「トークセッション」、第3部の「ミルク講座」を通じて、元なでしこジャパン・キャプテンの宮間あやさんの技術や経験を、オンライン配信を通じて全国の視聴者に届けた。
【第1回目のレポートはこちら】
https://soccermagazine.jp/nadeshiko/17406001
3部構成のイベントが進んだ後、最後の「質問コーナー」でも全国の視聴者からの質問に分かりやすく丁寧に回答する宮間さん。ここまでは第1回目と同じ内容で進行したが、最後の最後が違った。
この日の司会を務めたフリーアナウンサーの日々野真理さんが「これで質問コーナーを終わりにしたいと思うのですが…」との言葉に続き「実は、質問コーナーの特別枠として、どうしても宮間さんに質問したいという方がいらっしゃいますので、つないでみましょう」と話すと、画面には永里優季さんと亜紗乃さん姉妹が並んで登場したのだ。宮間さんと永里姉妹はともになでしこジャパンの一員として世界と戦った戦友でもあり、永里姉妹にとって宮間さんは師と仰ぐ存在でもあるという。
姉の優季さんは今年10月に神奈川県2部リーグのはやぶさイレブンに電撃加入。男子チームへの参戦は日本だけではなく世界中の話題になったばかりだ。この日も直前までリーグ戦に出場し、試合を終えた直後にこのイベントに参加していた。
一般参加者としてオンライン配信を視聴していたという二人から早速、質問が飛ぶ。
妹の亜紗乃さんが「サッカーって結構、感情が表に出てしまいがちなスポーツですが、どのようにして感情をコントロールしていましたか?」と質問すると宮間さんは「いや、私もほぼ(感情が)出ちゃってたよね」と笑いを誘いつつ、「そういうときは自分にとって何が一番大事なのかを自分に問いかけましたね。『大事なのは自分じゃない、チームだ』って思い返すようにしていた」と回答。
姉の優季さんは「私は、あやのフリーキックやペナルティーキックを蹴る前の雰囲気や仕草が、オーラが出ていてすごく格好いいと思っていました。FKやPKを蹴る前にはどんなことを考えていましたか?」と質問。それに対し「今日はいろんな質問を受けたけどこれが一番答えが簡単だね」と前置きすると、「その瞬間は自分じゃない」と断言。
驚いた表情の永里姉妹をよそに、「チームを代表して蹴るものだから。足は私の足だけど、このボールはチームのもの。そう考えながら、PKであれば蹴ったボールがゴールネットを揺らしているイメージを、FKなら蹴ったボールがどういう軌道でどこに行くかをイメージできるまでは絶対に蹴らなかった。そういうボールを任されるわけだから、絶対に自信を持って蹴れるようになるまで練習をする」とプレースキックでの持論を明かしてくれた。
宮間さんはこの日のトークセッションでも、中学生時代、男子チームに一人混じってサッカーをしていた時に、男子とのスピードやパワーの違いに悩んでいたと明かし、チームメイトの男子から「あやの良いところを出せば良いんだから」と言われて、実際に周りの男子が宮間さんの技術を生かすために体を張ったり、ダイレクトでシュートを打てるようなパスを出したりしてくれたというエピソードを語っていた。その経験があったからこそ、その後のなでしこジャパン時代でも「自分よりもチームを、仲間を大切にする」という思いにつながっていたとも話していた。永里姉妹からの質問への回答にも、何よりチームを大切にする宮間さんのサッカー観が詰まっていた。
回答を聞いた永里姉妹は尊敬の眼差しで拍手喝采。近いうちに宮間さんが、永里姉妹が活動する神奈川県厚木市に訪問する約束をして、「サッカーマガジン雪印メグミルクONLINEクリニック」の幕が下りた。
元なでしこジャパン3人のやり取りを、オンラインを通じて全国の女子選手や指導者も聞き入っていたはず。永里姉妹のサプライズ登場によって、視聴者にもより一層「自分よりもチームを大切にする」という宮間さんのサッカー観が伝わったことだろう。