上写真=Jリーグデビューに向けて練習に励む糸原(写真◎石倉利英)
「まだ足りないところがある」
10月3日の明治安田生命J3リーグ第19節で、ガイナーレ鳥取はカターレ富山に3-0で勝利。連敗を3で止め、4試合ぶりの勝利をつかんだ。
しかし鳥取GK糸原紘史郎は「チームの勝利は、もちろんうれしかったですが、それとは別に、悔しかったです」と振り返る。富山のゴールを守っていたのは、びわこ成蹊スポーツ大の同期であるGK田中勘太。これが記念すべきJリーグデビュー戦だった。
サンフレッチェ広島ユース出身の糸原と、ベガルタ仙台ユース出身の田中は、びわこ成蹊スポーツ大で4年間しのぎを削ってきた。1年生のときからAチームに入った田中が常に先行していたが、糸原も4年生のときに大学最後の大会で先発出場。ライバルとして力を高め合い、今季そろってプロに進んだ。
ともに第19節まで出場機会ゼロだったものの、先にチャンスをつかんだのは田中だった。田中は3失点で連敗を止められなかったが、それをベンチで見た糸原は「富山も鳥取も3連敗していました。そこで試合に出ている勘太を見て、出ることができない自分には、まだ足りないところがあるんだと感じた」と振り返る。
鳥取のGKは今季、ガンバ大阪から完全移籍で加入した田尻健が開幕からフル出場を続けている。リーグ戦3連敗翌日の9月28日、サンフレッチェ広島との練習試合で前半の45分間プレーした糸原は、5失点を喫した(最終スコアは1-6)。失点はGKのせいだけではないものの、差を縮めていくためには、目に見える結果も大事な要素の一つになり得る。
デビューを果たすために求められることを、糸原は「練習試合でチャンスがあったし、普段の練習でも、いかに自分のパフォーマンスを発揮できるか。頭で分かっていても、発揮できなければ意味がない。本数を重ねて、波なくプレーできるようにしなければいけない」と語る。さらに「プロ1年目であることは関係なく、リーダーシップを持ってチームを束ねていけるように、普段からやっていく必要がある」と言葉に力を込めた。
田中とは試合後にLINEのやり取りで、ピッチ上の雰囲気などを聞いたという。今季の富山との対戦は終わったが、次に所属クラブ同士が対戦するときは、2人もゴールを守るために、ライバルに先を越された悔しさと、刺激を力に変えて前に進む。
取材・写真◎石倉利英