上写真=末吉塁が帰ってきて、左サイドが活性化。負傷で欠場した分も、得意の突破を見せる(写真◎J.LEAGUE)
「どちらかのサイドはジャンプする」守り方
「ウイングバックですけど点は取りたいので、貪欲に狙っていきたい」
5月に負傷して長く戦列を離れていたジェフユナイテッド千葉の末吉塁は、7月30日のファジアーノ岡山戦で途中から入ってついにピッチに帰ってきた。続くザスパクサツ群馬戦で先発に復帰、89分までプレーして、試合も3-0で完勝した。左のウイングバックとして気持ちよく走って、小気味のいい突破を見せた。だから、ゴールへの欲も自然に湧いてくる。
それならば、節目のゴールはどうだろう。千葉のJ2ホーム通算400ゴールまで、あと2つ。8月14日の第31節から3試合連続でホームゲームだ。
「400点目、いかせてもらっていいですか。メモリアルゴール、狙いにいきます!」
リップサービスかもしれないが、威勢がいいのが頼もしい。ここまで16試合でノーゴールだから、今季初ゴールがメモリアル弾というダブルの祝砲になるかもしれない。
もちろん、浮かれているわけではない。再び採用した3バックでは、ウイングバックの走る距離は長く、好守にタフさが求められる。攻めてはまさにウイングとしてチャンスを作るし、守れば5バックのワイドでスペースを埋める役割が求められる。
「守備では5枚になりますけど、相手に対して押し出していくやり方です。後ろの5枚でスライドしながら前にプレッシャーをかけていくことをやってきたので、もう一度意識しています」
5バックと聞けば、後方に引きこもってはね返すばかりに思われがちだが、そうではない。「5バック&コンパクト」が千葉の狙いだ。
「5枚になるとどうしても守備で重くなって、攻撃のときに人数をかけられないこともあります。相手に危ないところに入ってはこられないけれど、自分たちが奪いにいくときも引いたままになることがあります。だから、どちらかのサイドはジャンプするというか、スライドしながら前に取りにいくことをやっていて、特に相手が4バックのときにはどっちのサイドがジャンプするかを意識しながら練習しています」
5バックでありながら、どちらかのサイドが前に出ることでコンパクトさを保つ守り方。群馬戦ではそれが功を奏した。
「群馬のスタイルでは後ろからつないで崩したいだろうから、こちらが変に食いついてしまうとズレができて危ないところに進入されます。前半の途中から攻め込まれたけれど、危ないところに入られていないですし、後半もボールを持たれたけれど、持たせていた方に近いイメージです。奪ってからカウンターで得点もできたので、いい流れでした」
こうして、実に6月9日以来、9試合ぶりのクリーンシートを達成している。
攻撃では風間宏矢のクロスをブワニカ啓太がヘッドで合わせた2点目に代表されるように、右サイドから持ち込むチャンスが多かった。左ウイングバックの末吉としては、最後に一気に勝負に出られるから大歓迎だという。
「右で作ってくれるから、ボールが左に入ったときに1対1で仕掛けられるのでありがたいんです。長所を出せるので、右で作って左に展開して仕掛けるのが、チームとしてもいいリズムを作れます」
その意味では左右非対称だが、「それもバランス」と屈託がない。
「右がじっくり作るなら、こっちはスピード感を持って突破を仕掛けていけばいいですし、右の(福満)隆貴が低い位置にいれば僕が高い位置に出ていけます。攻撃のバランスが良ければ、取られたあとの守備のバランスもいいので、そういう戦術ですね」
次は7位のFC町田ゼルビアが相手。1試合消化の少ない10位の千葉とは勝ち点差はわずかに2だから、勝てば順位を入れ替えることができる。末吉の今季初ゴール&メモリアルゴール&勝ち点3で、負傷からの復帰を派手に祝いたい。