上写真=小池は2試合連続ゴール中。次節も狙っていく(写真◎Getty Images)
「変な力が入っていない」
チームは一つの生き物、という比喩はよくあるが、そうだとしたら、小池純輝の存在は体のどの部分に当たるのか。おそらく手の指なのではないだろうか。
明治安田生命J2リーグ第16節のジュビロ磐田戦で8分に挙げた先制ゴールがそれを想起させた。佐藤優平が右に展開してからクレビーニョがシュート性のクロス、これを小池がニアサイドでぴたりと止めてから次の瞬間、ゴールの近い方のトップコーナーを撃ち抜いた。ゴール前にするりと忍び込む柔軟性、トラップの素早さ、巧みさ、正確性すべてが、手の指のような繊細さに基づいていた。
「あまり何も考えていなかったんですよ。力が抜けているというか、変な力が入っていないのかな。イメージ通りに止められたのですごく良かったです」
そうやって笑うが、何も考えない自然体でボールを包み込んだのだろう。
東京ヴェルディのサッカーは魅惑的だが複雑で、だからこそ人体のようにも思える。どこか一つでもずれれば調子が狂う。逆に高度に統合されれば、相手を寄せ付けない。2試合連続ゴールを含む計4ゴールと得点やチャンスが増えている小池は、その理由に、このサッカーだからこそ、を挙げた。
「僕はそれこそジュビロのルキアンみたいに一人では点は取れません。ヴェルディのサッカーに取らせてもらっているんです。チームの良さが出ている時間が長くなって、自分の良さも出てきているので、自分自身の変化というものはさほどありません」
その前提として、ゴール前にいるということが大事になるが、そこはセンス。
「(センターフォワードの大久保)嘉人さんのとろにボールが入る瞬間に相手が食いつくので、その背後を狙っていくのは意識していますね。基本的にはストロングと言うか、自分の持ち味の背後を狙うということはベースとして変わらないですし、使い分けとまではいかないですけど、意識して動いています」
東京Vの独自スタイルに、この持ち味がぴたりとハマっている。永井監督も「彼の一番のストロングは背後を狙えること。ギャップを突くところはずば抜けています」と絶賛するのだ。
「考えて選択するより、自然に動いているといいプレーができる印象があります」
小池のシックスセンスがいま、研ぎ澄まされている。