攻撃サッカーを標榜する東京ヴェルディから、ゴールの歓喜が薄れてきている。ここ3試合はすべて引き分けで、得点もわずかに1と少し寂しい。だからこその新井瑞希だ。鋭いステップワークで相手を翻弄するドリブルで勝負だ。

上写真=暑い夏こそ新井の切れ味鋭いドリブルが生きてくる(写真◎J.LEAGUE)

小さな空間を射抜くキック

 リズミカルなステップでボールを動かすドリブルとコンパクトに振り抜くシュート。昨季途中から加わった新井瑞希の最大の魅力だ。

 今季の出場はまだ2試合だが、前節では首位を快走するV・ファーレン長崎戦で82分にベンチから飛び出していった。0-0の状況だったから、狙うはゴール、もしくは決定機の創出だ。

 チームとしての意思も統一されていた。左サイドの前線に大きく開いた新井の足元に、どんどんボールを入れていく。佐藤優平から何度も何度もパスを回した。受けた新井が前を向くと相手が反応して下がる。こうして作ったチャンスのうち、最大のものは91分だろう。

 左サイドで受けて右足の方にボールを置き、顔を上げると端戸仁が見えた。ゴール中央に走って来る。手前にいるDFの頭を越して、その裏に走ってくる端戸に合わせつつ、端戸を追いかけてきたDFにも触らせない小さな空間をピンポイントに射抜いた。

 端戸のヘディングシュートは外れてしまうのだが、シャープな右足のキックが光った一瞬だった。

「相手が引いてしまうと仕掛けるスペースなくなってしまうのですが、そのときに外に展開して相手が揃っていないときにフリーマンを見れればいいと思っていて、あのシーンではタイミングよく(端戸)仁くんが動いたので一本入れておきました」

 新井が入ったあとはほとんどの攻撃が左サイドになったのだが、佐藤が積極的にボールを供給したのはきっと、「出したくなる場所」に顔を出すからだろう。最前線の左サイド、タッチライン際に大きく張り出していわゆる「幅を取る」エリアに入り、ボールを基準にして細かく立ち位置を変えてボールホルダーの視野に入る工夫が見受けられる。

 ジョーカーとしての起用が続くが、その機会を増やすためにも、やはり結果がほしいところ。「チームが勝てばいいと思っているので、自分の役割はドリブルで敵陣に入ってチャンス作ることです。ゴールは自分が取っても周りの選手が取ってもいいと思っているので、あまり考えてはいません」とゴールの手前のアクションを特に大切にしている。

 実際に、今季初出場となった5節のヴァンフォーレ甲府戦では、75分からの登場直後に大仕事。同じように左サイドで受けると、カットインの素振りを見せて中を警戒させておいて、切り返しから縦に突破、クロスボールはクリアされるが、こぼれ球を若狭大志が蹴り込んでチーム4点目となった。

 ただ、チームのことを言えば、攻撃的な思想を前面に押し出しながら、この3試合で1得点、それもアルビレックス新潟との8節でセットプレーから奪ったものだった。だからこそ余計に、ゴールがほしい。

「チームとしてなかなか点が取れない試合が続いていますが、監督がミーティングで、チームとしてやりたいサッカーをやる中でいい意味で型を崩せ、と言ってくれるんです。僕の持ち味はドリブルで持ち込んでゴールに迫っていったりシュートを打つところ。シュートそのものを増やしたり、ゴールに直結するようなゴール前でのプレーを見せたいです」

 型破りなドリブル&シュートが、東京V独自の世界観に、また新たなスパイスを与えてくれそうだ。


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