上写真=新潟戦は痛恨のドロー。永井監督はこの悔しさを次の長崎戦にぶつける(写真◎Getty Images)
扉を早く開けてその先の世界へ
J2第8節のアルビレックス新潟戦は、アディショナルタイムに決められて1-1のドロー。ロングスローからゴール前に送り込まれた「力技」による失点だったが、先制したのが79分で、残り10分と少しを耐えられなかった。
そこにいまのチームの課題はあるものの、両監督ともが非常に見応えがあったと試合後に強調していたとおり、ハイレベルの駆け引きを楽しんだ。その一つが、藤田譲瑠チマをめぐる戦略。ボールを出し入れするキーマンを、新潟はロメロ・フランクに厳しく監視させる手を打ってきた。
「それは予想していたんです。本来のプランであともう一人、(井上)潮音かハル(井出遥也)が下りてきて、ジョエルは受けずに他の選手が受けていいよ、と話していました。もちろん、ジョエルが受けて右か左に弾いてもいいし、その方法やタイミングは伝えていました」
「ジョエルは70点ぐらいはできていましたね。これからは試合を通してあそこを消しに来るのは想定内なので、今度消されたときにどうやって優位性を保てるか、そこは選手たちが理解してくれるとゲーム運びもうまくなっていきます」
ディテールを解説しようとするこのコメントを聞くだけでも、「見るサッカー」だけではなく「考えるサッカー」の楽しみをファン・サポーターに提供しようとする意欲を感じないわけにはいかない。
その思想の根っこにあるのは「選手が楽しめ」だろう。選手が楽しまなければ、見るものを楽しませることはできない。だから、要求は高い。
「選手たちに一番伝えていることですが、ボール保持率を80パーセントに高めるという数値目標があって、なぜ支配したいのかというと、すべてゴールを目指すからです。ボールを持つことで心地良くなってしまって間違えた方向に行ってしまうのがありがちなことで、点を取るという情熱を持ちながらポゼッションを行わないと意味がないんです。難しいんですけど、その扉を早く開けてその先の世界に早く行ってほしいと思います」
ゴールへの情熱。これはもはや、東京VのDNAと言ってもいいだろう。それがいまのチームに必要なことで、それを表現できれば次のステージへと進める確信があるのだ。
「いまやっているサッカーが一つ上のレベルに行くには、受け手ですね。フィニッシュゾーン(相手最終ラインの裏側)で受ける人数、回数がもっと増えてくることが大事です。試合中で受け手の選手が両手を上げて、いまボールを出すのはオレのところだっただろう! とアピールする回数が増えてくると上に行けるんです。現状ではその回数は少ない」
永井監督が現役の頃のヴェルディは、逆に両手を上げない選手はいなかった。懐古主義ではなく、野性味の問題。いまのスタイルにそれが加われば…の思いがあるのだ。
まずそれを示すのは、次のゲームだ。相手はV・ファーレン長崎。堂々と首位を走る難敵が敵地で待ち構える。
「楽しみな相手ですね。首位の長崎とこのタイミングでできるのは楽しみですし、自分たちのサッカーでいい結果を持って帰ろうという思いでいっぱいです」
「チームの組織力、完成度の高さは、まさに首位にいるべきチームだと感じています。我々も昨年からの成長の度合いを見せたい試合。恐れることなく勝負したい」
どんな戦略で挑むのかは注目の的。90分を終えたあとに、首位叩きの快哉を叫びたいところだ。