上写真=小池はサイドを駆け抜けるランが魅力だ(写真◎Getty Images)
誰からでももらえるように
開幕から1試合を除いて5試合に先発してゲームを作り、ここ2試合は途中出場で流れを変える刺客になる。芝生の上を滑るように進むスピードあふれるランが魅力の小池純輝は、永井秀樹監督のタクティクスの中で重要なピースになっている。
最新のゲームで言えば、J2第8節のアルビレックス新潟戦で間接的にゴールにつながる働きを見せている。79分の先制ゴールは佐藤優平が蹴った右CKを、ニアで高橋祥平がヘッドでたたきつけてゴール左へ送り込んだものだが、このCKを奪うまでの一連のプレーがいまのチームらしい鮮やかさだった。
・右サイドのスローインを小池が後ろへ投げる
・受けた山本理仁が左斜め後ろへ
・若狭大志が左斜め前にくさびのパスを打つ
・森田晃樹が相手に囲まれながら後ろに持ち出してから左サイドへパス
・福村貴幸がワンタッチで左ワイドにいた山下諒也へ
・再び福村に戻す
・福村は右横の森田へ
・森田はワンタッチで福村に戻す
・福村は新潟のセンターバックとサイドバックの間にパスコースを見つけ、呼応して裏に走り込んだ山下へスルーパス
・逆サイドから小池、中央に森田、その少し後ろに山本が走ってくる。山下のセンタリングは小池を狙うが、その前にカバーに入ってきた新潟DFがクリア
目の前でクリアされた小池は、判断ミスを悔やんだ。「スルーパスが出た瞬間に走ればよかったんですけど、ワンテンポ遅れてしまった。最初のタイミングであれば相手の前に出られたので、反省しています」
とはいえ、最後に走りきったことで相手に危機を感知させ、CKに逃げさせ、それが結果的にゴールに結びついている。小さなことの積み重ねがいかに重要かを物語るダッシュだった。
それにしても、このシーンで披露した10本のパスに象徴される「ヴェルディらしさ」は楽しさ満載。見る人を楽しませようとするエンターテインメント性はもとより、永井監督が常に選手に語りかける「楽しみながらやろう」の言葉を選手が実践しているからだろう。
一方で、だからこその苦悩も小池にはある。
「そこまで意識しているわけではないですけど、去年なら(パスが)出てきたのに出てこなかった場面もあります。そこで出てくるようになったら、僕自身がチャンスに顔を出せると思います。こういうのって、比例すると思うんです。ボールをもらえるようになればその分、チャンスもいいプレーも増える。いまは一歩手前という感覚ですね。そこは高めていきたいですし、誰からでももらえるようにタイミングを作っていきたいと思います」
高度な技術と判断の組み合わせの連続で成立する「楽しい」スタイルは、この感覚がぴたりと合わさったときに途轍もない威力を発揮する。わずか8試合のこの時点で「一歩手前」まできているのであれば、これからどれだけ進化していくのか、期待しないわけにはいかない。