高い要求のための「目利き」
キャプテンの渡辺広大が中断期間を振り返ったとき、奥野僚右監督からの要求が非常に高く、どんどんと上を目指していかないと認められない、と話して気を引き締めた。奥野流のきめ細やかさを象徴するエピソードだろう。
「そんなことを話していましたか。選手たちは意欲高くやってくれていますね。スタッフである僕たちからピリピリ感が出ているので、選手もしっかりと気持ちが入ってきました」と笑う柔和な顔は、順調な積み上げを物語っているようだ。
渡辺のコメントにあった「高い要求」については、こんな風に明かしている。「ハードルを上げることによって、それがスタンダードになっていきます。リズムとテンポの話であったり、ボールへの厳しさだったり、判断の速さだったり」
「スタンダードを上げていくことで、試合に出てやるという気持ちが選手たちから出てきています。僕が先を行っているというわけではないですし、技術的に不可能という要求はしていないんです」
もう少しでできるようになる、という絶妙なポイントを設定して要求するには、選手個々の情報を集め、分析した上での「目利き」が必要で、それが選手に心地の良い刺激を与えているのだろう。
打ち負かすイメージ
6月27日に控える再開初戦の相手は水戸ホーリーホックだ。監督は秋葉忠宏。ザスパ草津時代に選手としてプレーし、ザスパクサツ群馬の監督も務めた「ザスパOB」である。ファン・サポーターにとっては、いわば因縁マッチとしての楽しみも享受できる。
「クラブのOBで監督も務められましたから、ザスパの歴史を私が引き継いでいるわけです。チームが成長している姿を秋葉さんにも見てもらいたいですね。秋葉さんはとにかくエネルギッシュで、選手の心をつかむのがうまいだけではなくて、論理的でやりたいサッカーが明白です」と6歳年下の監督について謙虚に語るが、そのあとに口からこぼれた一言、「だからこそ打ち負かしたい」が本音だろう。
水戸の分析について多くは語らないが、「積極的に流動的に動いてきて、連動した動きもたくさんあって、統一感を持って向かってくるチームですね。手強くて力のある印象です」と警戒している。だがもちろん、「打ち負かす」イメージはできている。
「うちが攻撃について変わった部分は、連係が良くなってきた、そこに尽きますね。林(陵平)が入ったことで、いろいろなバリエーションが増えました。背後の動きもあるしポストプレーもあって、距離感が整ってきた。それによって、サイドチェンジもあれば他の部分の連係もうまくいくようになりました」
「連係」という言葉に集約させたのは、自信のある手の内をやすやすと明かすつもりはないからだ。
「いよいよサッカーのある日常が始まります。思い存分に楽しんでいただき、私たちは勝利をプレゼントしたい」
サポーターへのメッセージにも、力がこもる。