2月15日、明治安田J1リーグの開幕戦で横浜F・マリノスはアルビレックス新潟を迎えて、1-1のドローに終わった。前半のうちに先制されながら、PKで追いつく展開。新システムの3-4-2-1から従来の4-4-2へとスイッチした90分の戦いに、「変幻自在」を目論むチーム作りが透けて見える。

上写真=ホーランド監督は3バックを採用しつつ、4バックに変更する柔軟性も見せた(写真◎J.LEAGUE)

■2025年2月15日 J1第1節(観衆32,713人/@日産ス)
横浜FM 1-1 新潟
得点:(横)アンデルソン・ロペス
   (新)太田修介

画像: ■2025年2月15日 J1第1節(観衆32,713人/@日産ス) 横浜FM 1-1 新潟 得点:(横)アンデルソン・ロペス (新)太田修介

「ボールを握りたいと言っています」

 スティーブ・ホーランド監督のJ1での初陣となったアルビレックス新潟とのホームゲーム。新しく採用した3-4-2-1の布陣に注目が集まった。

 だが、その効果のほどを確認する楽しみの前に機能性を失い、相手が走らせるボールを追いかける羽目になって押し込まれ、26分には先制を許した。アンデルソン・ロペスのPKで同点に追いついたのは、70分に3人を同時に代えて昨年までの4-4-2に戻したあとの77分のことだった。

 新しい挑戦を短時間で成功させる魔法はないが、3バックの右に入った松原健はその強みを攻撃面に見出す。

「もちろん、もっとできれば、ですけど、3バックがもうちょっと前に絡めると、より攻撃に厚みが出てくると思う。攻めているときのリスク管理も3枚の強みになります」

 その理想像が確かなものであるほど、うまくいかないことの輪郭もはっきりしてくる。

「まだ発展途上ではあるけれど、その中でも自分のところや3バックとして改善できる部分はある。苦し紛れに蹴っちゃうシーンがあるので、ボールの運び方やパススピードは改善する必要もある」

 新潟が迷いなく仕掛けるハイプレスに戸惑ったわけだが、その難しい流れを変えた一人、3枚替えのうちの1枚である天野純もピッチの外から落ち着きのなさを感じていた。

「ボールを持っているときに自分たちのプレーはまったくできなかったな、と外から見ていても感じました。相手のプレスをはがしてシュートまでいくシーンが70分頃までなかなかなくて、安心感のところも難しいな、と。もうちょっと時間がかかるのかなと思います」

 スムーズさに欠ける反省はホーランド監督も「失点したあとにバタついた」と表現していて、総じてうまくいかなかったことに異論はないだろう。

 そのホーランド監督が昨年までの4-4-2にかじを切って同点に追いついたことは、勝負への現実主義と柔軟性の両方を併せ持つ証左と言っても良さそうだ。理想にだけ囚われて頑なに3バックで押し切ろうとするのではなく、天野が「今年はほとんどやっていなかった」とする4バックに切り替えてでも、勝ち点をもぎ取ることを徹底したからだ。

 それに、天野の証言によれば、そもそもはホーランド監督も押し込んで攻撃するスタイルを念頭に置いているのだ。

「監督は本当はもうちょっとボールを握りたいと言っています。これが最終地点ではないのは間違いないし、監督が描いているのは支配しながら相手陣内でサッカーをすることだから」

 そのための新しい挑戦だというわけだ。松原はこうも話す。

「新しい試みをやっているのでそう簡単にうまくいくとは思っていないですけど、でも、その中で一つでもいいシーンを出していくべきだと思うし、監督が途中から4バックにしたことで、相手もちょっと混乱していた部分は見えました」

「ただ、やっぱりこれ(4バック)がいいから、これでいこうというのも、それは違うとまでは言わないまでも、3バックでもできるようになれば、相手にとってつかみどころがなくなるチームになるので、そこはポジティブに常にチャレンジしていきたい」

 天野も同じ考え。

「規律の部分ではそんなに大きく変わることはないんです。今日は4-4-2でうまくいった部分もあるので、相手によって使い分けることもできるようになっていきます。その使い分けは監督が判断すると思うし、そうすればもっともっと相手を困らすことができますからね」

「アタッキングフットボール」が消えたわけではなく、変幻自在な「次なるアタッキングフットボール」を手にするための取り組み。その最初に苦しみを味わっているのは悪いことではないだろう。


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