今年、1年前倒しで正式にプロ契約を交わした安斎颯馬が、FC東京で右サイドの代名詞になりつつある。ひたむきに走り、黒子役に徹する一方でしっかりゴールを狙う姿勢が心を打つのか、シーズン中に専用チャントを歌われるようになったほど、スタンドの支持も熱い。青森山田高時代からの盟友である松木玖生が欧州へと旅立ったが、その不在を感じさせないように自身がチームを引っ張る覚悟はできている。同じ味の素スタジアムを本拠とするライバル、東京ヴェルディとの一戦(8月17日)を前に、次代の青赤を担う若者に話を聞いた。

上写真=シーズン後半戦、牽引車として活躍が期待される安斎颯馬(写真◎J.LEAGUE)

取材・文◎後藤 勝

体を張れるかどうかが勝負を分ける

──4月に行われた国立競技場の2連戦以降、出場停止だった町田戦を除くと、ターンオーバーを敷いた天皇杯の千葉戦以外はルヴァンカップも含めてほぼ休みなし。第8節東京V戦で受けた退場処分がターニングポイントになったのでは。

安斎 同じようなシチュエーションで、キャンプでもPKを与えていたことをテルくん(仲川輝人)に指摘され、プロというものを考えさせられる試合になりました。勢いだけでプレーするのではなく、もっと考えないと、1つのプレーで試合を壊してしまうことになる。今思えば、すごく大切な、価値ある学びを得られたのかなと思います。

──その試合ではスタンドのテンションもいつも以上に高かったようですが、どのような雰囲気を感じとりましたか。

安斎 試合に向けたその週の始めから、自分自身も東京のアカデミー出身として昂るものはありました。実際、スタジアムに入っても、アウェーで一面が埋まるのも初めて見ましたし、もちろんファン・サポーターがすごく高まっているということも自分の中では理解していました。ただ、個人的には気持ちが昂ってはいましたけど、落ち着いた思考でいつも通りにプレーできるよう、もっともっと冷静にやらないといけなかった。そういまは感じています。

──高宇洋選手も「いつもと同じように落ち着いてやりたい」と言っていましたが、心はホットに、頭はクールに?

安斎 東京Vとの試合に関しては、たとえどんな内容でも最後に勝っていればいい。結果しか求めない試合なので、それくらい熱く勝ちにこだわっていいと思います。ただその中で、変に硬くなってもよくないですし、ヤンくん(=高)が言っていた通り、なるべくプレーはいつも通りやることが重要かなと思います。

──前回の対戦では嫌なところを突かれて2失点。今週末は東京Vに対してどう向かっていきたいですか。

安斎 相手はボールを持ちながら試合を進め、2トップは身体が強いですし、背後をとることもできて、ずっと嫌なところにボールを放り込まれました。そういった相手のストロングを潰しつつ、自分たちは今、ハイプレスに行こうという意識もありますし、相手どうこうではなく、最後に身体を張ってやらせないとか、そういった今まで積み上げてきたものをどれだけ発揮できるかが大事だと思います。国立競技場の試合で見せられているような粘り強い守備がやっぱり東京のベース。相手にチャンスを作られても最後は体を張る、そういうところで勝てるかどうかが勝負の分かれ目になってくると思う。ディフェンスだけが、というのではなく、チーム全員でそこを意識して戦いたいと思います。

──チーム全員という言葉がありましたが、この夏、松木玖生選手が移籍しました。先日、欧州に向けて出国する松木選手を見送りに行ったと思いますが、どんな感情を抱きましたか。

安斎 まず頑張ってほしい、という思いが一番強かったですね。高校から一緒で、東京でも一緒にプレーしましたし、近くにいた存在だったのでちょっと心に来るものがありました。シンプルに頑張ってほしかったので「玖生、頑張ってこいよ」という気持ちで送り出しました。


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