6月29日の明治安田J1リーグ第21節で、サンフレッチェ広島は川崎フロンターレに先制されながらも終盤に追いついて1-1のドローに持ち込んだ。貴重な同点ゴールを決めたのは満田誠。90分でのべ4つものポジションをこなしたのだが、ベストはどこ?

上写真=88分に同点ゴールを決めて、満田誠はこの笑顔(写真◎J.LEAGUE)

■2024年6月29日 J1リーグ第21節(@U等々力/観衆22,393人)
川崎F 1-1 広島
得点:(川)マルシーニョ
   (広)満田誠

「ゴールキーパーにするには…」

 サンフレッチェ広島が追いついたのは、88分だった。左からカットインしてきた満田誠が中央のエゼキエウに預けてそのまま中へ、足裏で残したパスを受けると右足を振った。DFに当たってコースが変わったことで、ゴール右に吸い込まれた。

 確かに幸運に助けられたのだとしても、ゴールを狙う強い意志がもたらしたものだったことに変わりはない。1点をリードしていた川崎フロンターレが3バックにして守り切ろうとした壁を破ったことも、その価値を高める。

「相手もディフェンスを1枚増やして守りに入ったので、逆にその前のスペースが空いていました。そこに味方の選手が入ってきてくれたので、自分はしっかりパスを出して。そのあとに動きを止めずにボールが来ること信じていて、ワンテンポずらして出してくれたんで、相手のディフェンスもちょっと反応が遅れて、いいコンビネーションだったと思います」

 最終ラインの手前側にできたスペースを見逃さずに、仲間と一緒に息を合わせて攻略した。納得の一発だ。

 前節のアルビレックス新潟戦で左ウイングバックに起用され、この日も同じポジションで先発した。しかし、先制点を奪われたあとに東俊希と入れ替わってボランチへ。さらには、後半開始から18歳の中島洋太朗がボランチに入ると、満田は右のシャドーに入った。この日、3つ目のポジションに入ったことがスイッチになった。

 これで攻撃の圧力を一気に高めると、さらにピエロス・ソティリウ、越道草太、マルコス・ジュニオール、エゼキエウと、ぜいたくな攻撃スタッフが次々に投入されてさらにパワーアップ。ここで満田はまたもやポジションを変え、最初の左ウイングバックに戻ることになる。

 ただ、今度は押し込んだ時間帯だったから、高い位置で貪欲に攻撃に注力できた。それが同点ゴールの源になった。

 さて、こうなると、満田のベストポジションはどこなのだろうか。ミヒャエル・スキッベ監督はポジションチェンジの意図を「ゴールキーパーにするには少し小さいですね」とジョークも飛ばしながら、こう説明している。

「中盤でボールロストを減らすために、マコをボランチにしました。いつでもボールを受けられるところに動けるし、クリエイティブなプレーもたくさんできます」

 一つは、劣勢のポイントを消すため。

「ただ、彼のアグレッシブさ、ずる賢さといったものはどのポジションでも通用すると思っています」

 一つは、その万能性のため。

「選手交代の際に同じポジションをそのまま代えるよりも、ポジションチェンジをしながらという戦い方をしてきました。そうすることによって、相手を混乱させたり、新しい形で攻めることができるようになると思っています」

 そしてもう一つは、戦略的な狙いを具現化するためだった。

 では、満田本人の実感はどうか。

「仕掛けの部分やアシスト、得点シーンのような中にカットインしてゴールに絡んでいく、ということを求められていると思ったので、そこは自分も意識して入ってました」

「相手が押し込む時間帯が最初は続いていたので、前半の最後のあたりからは自分がボランチに変わって、自分たちで自信を持ってボールをつなぐことができました。押し返して自分たちもいい攻撃ができていたので、もうちょっと早い時間帯からできればよかったのかなと」

「ボールに関わる回数はやっぱり真ん中のポジションの方が多いですし、ボールに関わって自分もゴールに近づいていけるようなプレーが得意なので、そこは真ん中の方がいいですね」

 こう聞くとやはり、中央にポジションを取ることがこのアタッカーのセンスを引き出しやすいのだと分かる。ただ、それがそのまま答えになるわけではない。「でも」と満田は続ける。

「サイドで出ても、得点シーンのような形を作り出せるので、ポジションにこだわらずやっていきたい。左が、というよりは、試合の中でもポジションが変わったりすることもあるので、出たポジションで役割をこなしながら、自分の特徴を出していければいいのかなと思います」

 決して優等生発言なわけでなく、どこであっても自分のプレーを表現できるという自信の表れである。

 というわけで、満田のベストポジションは「ゴールキーパーを除くどこでも」ということになりそうだ。


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