上写真=強く鋭い飛び出して2ゴールを決めた東京Vの木村勇大(写真◎J.LEAGUE)
■2024年6月2日 J1第17節(観衆16,301人/@味スタ)
東京V 5ー3 札幌
得点:(東)木村勇大2、見木友哉、染野唯月2
(札)荒野拓馬、近藤友喜、原康介
最終ラインの裏をケア出来なかった札幌
東京Vにしてみれば狙い通りだっただろう。先制点。右サイドに翁長がワンタッチで最終ライン裏にボールを送り込み、木村が鋭い飛び出しでボールに追いつく。慌てて戻る札幌の左CB岡村を抑えて前進すると、GK菅野を右にかわしたが、交錯して転倒。PKを獲得した。
自ら得たPKを木村が蹴り込み、東京Vが先制に成功。開始わずか10分、ホームチームが早々にリードを奪った。
この試合に向けてトレーニングしていた週中、19位に低迷する札幌はペトロヴィッチ監督を今季終了まで続投すると発表した。残留を争うライバルとの対戦を前に、監督の去就に関する話題に惑わされることなく、一戦必勝で集中するためだったと思われる。
だが、チームは早い段階で先制を許す苦しい戦いを強いられた。守備から攻撃に転じた際のパスの精度が悪く、なかなか良い形でフィニッシュに持ち込めない。ボールをロストしては守備に回るケースも散見した。
札幌も20分に荒野のゴールで1点を返すが、ペースを掴むまでには至らなかった。東京V守備陣の鋭い出足の前に縦パスが収まらず、たびたびピンチを招く。32分の東京Vの勝ち越しゴールも、鋭い出足にやられた。
札幌のCB家泉が浮き球によるバックパスを頭で処理し、敵陣中央で構える荒野に落としたが、これを森田に読まれてカットされてしまう。そこから前方で動き出した染野にパスを通され、最後は右足でネットを揺らされた。
その後も東京Vは札幌の最終ラインを攻略し続けた。追加点は43分。後方からのパスを受けた森田が右サイドのスペースにボールを送る。札幌守備陣が誰もボールにアプローチできない中、翁長が快足を飛ばして追いつくとダイレクトで中へ折り返す。ゴール正面の木村には合わなかったものの、逆サイドで詰めていた見木が収めてシュートを放つと、ボールは右ポストを直撃し、さらにゴールまで戻ってきた札幌のCB中村に当たってゴールイン。東京Vがリードを2点に広げた。
攻めるしかない札幌は後半開始から岡村に代わってキム・ゴンヒ、中村に代わって長谷川を投入して攻撃姿勢を整える。キム・ゴン匕が1トップに入り、鈴木は右シャドーへ。駒井と荒野が2ボランチを組み、両ワイドは右に近藤、左に長谷川。3バックはボランチだった馬場が右CBにスライドし、中央に家泉、左はアウトサイドから菅が移動した。
果たして札幌は後半開始から1分と経たないうちに1点を返す。右CKでスパチョークを蹴ったボールを近藤が下がりながらもヘディングを放ち、ゴールにねじ込んで見せた。これで3−2。残り時間は十分になり、追いかける札幌にとって希望の1点となったかに思われた。
しかし、そうはならなかった。札幌は背後を狙われ続け、その後も失点を重ねた。59分、ギリギリのタイミングで飛び出した木村が家泉を抑えながら前進し、GK菅野もかわしてシュート。PKを獲得したプレーを再現するような形から追加点を奪った。78分には途中出場の山見がワンタッチで背後にボールを送り、染野が力強く前進してマークしていた荒野をステップで翻弄。左足でボールを流し込み、チームの5点目を奪った。
東京Vは、狙いを完遂。対して札幌は相手の狙いが分かっていながら手を施すことができず失点を重ねた。逆転へ向けて攻めに重心を傾けていたとはいえ、ハイラインを敷くならある程度、GKがスペースをケアしなければならない。だが、GKと最終ラインの呼吸が合っているとは言えず、広大なスペースを面白いように使われた。東京Vのボールの出し手にプレッシャーがかかっていないことも問題だった。アディショナルタイムに駒井の右クロスから原が決めてさらに1点を返したが、5失点してはさすがに勝利をつかむのは難しい。
この試合の結果、東京Vは暫定で10位に浮上。一方で札幌は得失点差で京都と入れ替わり、最下位に転落した。