上写真=決勝点を決めた武藤嘉紀(左)とともに満面の笑み。新井章太がファインセーブを連発して勝利に導いた(写真◎J.LEAGUE)
■2024年4月13日 J1リーグ第8節(@国立競技場/観衆39,080人)
町田 1-2 神戸
得点:(町)ドレシェヴィッチ
(神)山内 翔、武藤嘉紀
「事故を狙っているだけですからね」
「最低限の仕事はできたのかな」
GK新井章太の第一声は、少し謙遜しているようにも聞こえた。最低限、どころか、首位のFC町田ゼルビアのシュートをことごとくストップしてみせたからだ。
前節の横浜F・マリノス戦で前川黛也が退場処分、1-1の場面で急きょピッチに飛び出したが、決勝ゴールを許して1-2で敗れている。だから、この試合はどうしても勝ちたい。その思いが体を動かした。
「常にまったく同じ準備をしているんです。サブにしろスタメンにしろ、まったく同じ準備でずっとやってきて。川崎時代にサブの時代が長かったので、その経験を生かしていい準備ができたのかなと」
45+3分、ロングスローから始まった相手の攻撃で、仙頭啓矢のパワーショットがブラインドになって飛んできたもののしっかりはじき出し、48分にはCKからの林幸多郎のダイレクトボレーも正面でしっかり収めてみせた。86分にもロングスローから最後は荒木駿太がダイレクトで狙ってきたが、右に跳んできっちりセーブした。
そんな町田が自慢とするロングスローは、準備した対策を落ち着いて実行した。
「相手は事故を狙っているだけですからね。だから、僕があまり引き出されないようにというか、ゴールを空けないようにしようと。ゴールを守る、という姿勢で臨みました」
ロングスローはおおむね滞空時間が長く、ゆっくりと山なりの軌道を描いて落ちてくることが多い。そこがやっかいなところなのだが…。
「前日の練習からしっかり対策をしていたつもりです。ボールが落ちてくることによって、キーパーが出ていくとリスクは増えてきます。そこの判断を本当にはっきりしようと思って、前半は何回かチャレンジしましたけど、あとはいままでやってきた経験の判断の中でやりました」
ここでも「ゴールを守る」という原点に立ち戻った。
「もちろん自分も声をかけますけど、ディフェンスラインの選手が声をかけて、どこが危ないとかいろいろ話してくれるので、自分はゴールを守るだけでした」
その役割分担に迷いがなかったからこそ、これまでJ1のチームが苦しめられてきた町田のロングスローを落ち着いていなしていくことができた。
ただ、一つだけ悔やまれることが…。
「悔しい、悔しいっすね。みんなが粘り強く最後まで守ってくれたのに。サイドに来ればたぶん止められたと思うんですけど、股が開いてしまって」
90+6分にドレシェヴィッチに許したゴールのことだ。ただ、前節の失点とは少し感じ方が違っていた。
「すごく悔やまれるんですけど、やっぱり勝つことの大事さというのを、今日は本当に証明できたとは思います」
前節は1-2で負けた。今回は2-1で勝った。そこに雲泥の差がある。
新井にとっては川崎F時代、2019年11月9日のJ1第31節で鹿島アントラーズに勝って以来、約4年5カ月ぶりのJ1での白星となる。やはり勝利は格別だ。