松橋力蔵監督は今季、「てっぺん」を目指すと宣言した。J1復帰初年度の昨季を経て、より高い目標を掲げるに値する力を手に入れたことの証明だが、開幕からおよそ1カ月、4試合で2勝1分け1敗という現在地をどうとらえているのか。監督、選手には攻撃重視の思想に対して迷いが一切ない。

上写真=痛恨のドローにも、堀米悠斗に悲壮感はまったくない(写真◎J.LEAGUE)

■2024年3月16日 J1リーグ第4節(@味スタ/観衆17,055人)
東京V 2-2 新潟
得点:(東)山田楓喜、翁長 聖
   (新)谷口海斗、長倉幹樹

「後悔みたいなことはない」

 松橋力蔵監督は2024年シーズンの指揮を執るにあたり、「てっぺんを目指す」と宣言した。「優勝」ではなく「てっぺん」という言葉で表現するところに、この人のワードセンスが光る。

 3月16日のJ1第4節、東京ヴェルディに引き分けに持ち込まれたあともそうだ。一度は逆転に成功しながら90分に追いつかれる痛恨のドロー。勝利に足りなかったことを問われて「失点したところ」と即答したが、こうも続けた。

「失点したところもそうですが、我々としては得点を取りたい。そのためのトレーニングをしたい」

 2-1のまま逃げきれなかったことよりも、なぜ3点目が取れなかったかを最優先で議論のテーブルに上げる。そういう攻撃重視の思想がこのチームに染み込んでいて、その観点から今回の90分を「私は非常にポジティブにとらえています」とうなずいている。

 選手たちも同じ考えだ。今季から加わってすっかり欠かせない存在になったボランチの宮本英治は「悔しいけれど、アウェーでの勝ち点1は最低限の結果」と、ピッチの上と同じように切り替えが早い。そして、キャプテンの堀米悠斗にも悲壮感はまるでない。

「失点してからも変わらずに自分たちのやるべきことに集中して、逆転するところまでは、守備のプレスの部分を含めてかなり手応えはあるゲームでした。別に集中が切れていたわけではないし、2失点目もみんなやるべきことをやった上で、ファーまでボールが流れてしまったものでした」

 もちろん、ディテールは突き詰める必要がある。最後に同点に追いつかれたシーンは、左サイドからクロスを送られ、中央で弾き返せずに逆サイドに流れたところを押し込まれた。

「強いて言えば、シュウ(太田修介)とオレのどっちがクロスのところに出ていくのかというところで、(交代出場で)フレッシュなシュウがボールに行きましたけど、オレが行って(相手の)右足を先に切っておけば、もう少し中で時間も作れたのかな、とも思います。でも、できるだけあの時間帯には(自分が出ていくことで)ボランチの選手にサイドバック裏までカバーさせたくない気持ちもありましたしね」

 3点目を狙いながらの守備はそこが課題になるだろうが、決して負けたわけではない。「今日のようなプレーをしていれば、勝つ試合を増やせると思います。みんなのその姿勢というか、勝ちに対する思いは至るところに出ていたので、気持ちを切り替えやすい」と堀米には納得感もある。だから、「ある程度やるべきことはやった上での失点なので、後悔みたいなことはないですね」と、言葉には前向きな力がこもっている。

「いい距離感の関係が生まれれば」

 右サイドに松田詠太郎。左サイドに小見洋太。攻撃の鍵を握るサイドハーフは、単にサイドを攻略するばかりではなく、チャンスメークだけではなくフィニッシャーとしての役割をより強く求められている。

 小見はポジションに縛られずに神出鬼没にピッチを駆け回るし、松田も得意のドリブルを生かすためにウイングとしてプレーするほかに、45分に逆サイドのポケットを取りにいったように、よりゴール前でのアクションを増やしている。

 松橋監督は「より良い距離感」のためだと説明する。

「相手の最終ラインの状況を通して(チャンスメーカーかフィニッシャーか)両方を使い分けることも大事だと思うんですけど、あとはヴェルディさんの守備の構造を見て、できるスペースをどう使って誰が使っていくかという連動性の意識を持って、いい距離感の関係が生まれれば、選択肢も生まれると思います」

 それが仕組みとして戦術に組み込まれているというよりは、即興の意味合いも強いとするのが堀米だ。

「そこは人によるのかなと思います。(松田)詠太郎は右で張っていることが多いし、小見ちゃんはどこでもプレーできる選手なので、どこかに数的優位を作りたいんだろうと。だったら、その人数が多いところで崩せばいいんだと思う」

 それぞれの個性によってプレーの選択が変わっていく。そんなアドリブを無理なく手懐けていることこそが、割とイージーに語られがちな「ポゼッションスタイル」という言葉よりは、いまの新潟の強みを示しているのではないだろうか。

「そのポジションにいない」ことを問題視するところから一歩進んで、「どのポジションにいるか」を前提にして攻撃を組み立てていく。悪く言えばポジションが守られていない規律不足になるのかもしれないが、別の角度から見れば、それぞれの感性を優先させながら柔軟に戦う弾力的な強度を獲得できた、とも言える。

 だから堀米は「何かを変える必要はないと思います」と断言するのだ。


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