16年ぶりにJ1に帰ってきた東京ヴェルディは、アカデミー育ちのキャプテン・森田晃樹に引っ張られて戦った。2月25日の明治安田J1リーグ第1節で横浜F・マリノスと戦い、衝撃的な逆転負けを喫したものの、森田の前向きな言葉が90分の充実感を表していた。

上写真=晴れ晴れとピッチを駆けた森田晃樹。キャプテンとして衝撃の敗戦にも前向きな言葉を繰り返した(写真◎J.LEAGUE)

■2024年2月25日 J1リーグ第1節(@国立/観衆53,026人)
東京V 1-2 横浜FM
 得点:(東)山田楓喜
    (横)アンデルソン・ロペス、松原健

「下を向く内容でもなかった」

 衝撃的な逆転負け。キャプテンである森田晃樹が切り替えるのは早かった。

「試合が終わってからチームメートと話して、前向きな課題が出ています。終わった瞬間は本当に悔しかったですけど、まだ始まったばかり。もうポジティブに、前向きにやり続けるしかないと思ってるんで、いまはそんな気にしないです」

 7分に山田楓喜が鮮やかなFKで先制し、時間の経過とともに押し込まれるが、体を張って耐えていた。しかし、PKを献上して89分に同点とされると、90+3分に逆転弾をたたき込まれ、真っ逆さまに黒星へと突き落とされた。

 中盤の中央でチームをコントロールしていた森田は「自分たちのボールにできなかったので、疲れてしまったのかな」と、敗れた実感を正直に告白する。横浜FMの圧力に押し込まれる時間が長くなって、力尽きた格好だ。

 だから逆に、早々に頭の中をリセットできたのかもしれない。スタミナに敗因を求めることができるということは、プレーそのものが間違っていたわけではないからだ。

「下を向く内容でもなかったと思いますし、まだ始まったばかりなので、続けていきたい。チームとしてポジティブな気持ちでまた準備できるかなと思います」

「積み上げてきたものが要所に出てましたし、マリノスさん相手でもやれることが分かったので、継続してやっていけたらいいなと」

「今年のヴェルディは戦うチームだと見せることができたと思いますし、守備の強度についても80分過ぎまではリードしてましたから」

 そうやって、次々にパワーワードが飛び出してきた。

 興味深いのは、ミッドフィールドだ。森田と見木友哉で組んだ中盤のセンターは、どちらもテクニックに秀で、プレービジョンが明晰で、賢く、球際のバトルで一歩も引かないコンビ。見木は千葉から移籍してきたばかりだから、ヴェルディ育ちの森田がうまくそのセンスを引き出していた。

 見木もこのコンビに手応えを感じている。

「攻撃のところではどちらかが真ん中にいることは意識していて、森田くんが右に流れれば自分が真ん中に入るようにして、お互いを見ながらやっていました。守備でもボールサイドのインサイドハーフを捕まえにいくことが多くて、逆のインサイドが絞ってくるところに対して相手のフォワードへのパスコースをできるだけ切るという、横のスライドの速さは意識していました」

 そんな細かな約束事をピッチで表現するために、森田が大切にしてきたのはやはり、話すこと。

「練習でも練習試合でもあの形はやってきていて、話も何回も重ねてきました。そういうところで連係というのはよくなったなと思います」

 チームにとって16年ぶりのJ1の最初のゲームは、31年前の「黄金カード」の再現を、同じ国立競技場で果たした一戦。そんな注目の晴れ舞台で、新しい歴史を作るキャプテンが力強くチームの先頭に立っていた。


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