サンフレッチェ広島GK林卓人が、現役生活最後のホームゲームの試合終了をピッチ上で迎えた。11月25日の明治安田生命J1リーグ第33節・ガンバ大阪戦で今季初めてベンチ入りし、83分から大迫敬介との交代で出場。試合後のメディア対応で思いを語り、その大迫に背番号1を託したエピソードについても明かしている。

上写真=エディオンスタジアム広島のラストマッチでピッチに立った林。ハイボールなどを確実に処理し、大迫との『完封リレー』で締めくくった(写真◎J.LEAGUE)

■2023年11月25日 J1リーグ第33節(@Eスタ:観衆29,907人)
広島 3-0 G大阪
 得点=(広)満田誠、中野就斗、加藤陸次樹

「ただただ、ありがとうです」

 試合後の引退セレモニーや家族・友人との記念撮影を終えて取材エリアに現れ、最初の質問で「セレモニーを終えて、どんな気持ちか」と問われると、「その前に、まず」と切り出した。

「このセレモニーをやるためにメディアの皆さんの前では、あまりしゃべらないようにしていたので、協力してくださった皆さんに、この場を借りてお礼を言いたいです。ありがとうございました」

 11月20日に今季限りでの現役引退を発表したが、セレモニーでファン・サポーターに直接、自分の口から伝えるまではと、この日に向けた練習では報道陣に思いを明かさなかった。そのことへの感謝を最初に伝えてから、あらためて「こんな劇的な展開があるかというくらい。最後にみんなが自分を出場させてくれましたし、最高でしたね」と喜んだ。

 いかに現役最後のホームゲームといえども、3位フィニッシュに向けて勝利が必要なだけに、負けている状況や同点、あるいはリードしていても僅差では、林に出場機会を与えるのは難しかっただろう。だが広島は53分までに3-0とリードし、偉大な守護神をピッチへと送り出す。その後に何度か攻め込まれたものの、林は落ち着いたプレーで防いで無失点勝利に貢献した。

 エディオンスタジアム広島のラストマッチともなった一戦には、3万人近い大観衆が詰めかけた。「選手は、人に見られて成長すると思った」と語り、「これだけの景色、人の思い、ピッチに降り注ぐ声援は、めちゃくちゃ心地良かったです」と万感の表情を浮かべた。

 引退セレモニーでは、背番号1のユニフォームを大迫に渡した。大迫が日本代表の活動でチームを離れる時期と、引退発表が重なっていたため、足立修強化部長に了解をもらって「敬介にだけは、先に言っていた」。すると足立強化部長から「じゃあ、お前から最後に1番を渡してくれ」と頼まれたというエピソードを明かした。

「引き受けてくれるんですかね、あいつは。返事は聞いてないので分からないですけど」と笑ったが、すぐに表情を引き締めて「彼が(広島に)入ってきたときから、敬介と世代交代していくんだろうと思わせてくれていた。それができてよかったです」とコメント。大迫への期待を問われると「僕が何も言うことはないんじゃないですか。僕ができることはないですし、彼の努力もこれまで見てきた。このまま日本代表の正GKになっていってほしい」とエールを送った。

 広島の歴史を受け継ぐ後輩にも「今日の試合を見て分かるとおり、これだけ強いチームで、チームとして良い時期に入ろうとしている。それが新スタジアムで加速していけばいいと思う。気を引き締めて、上を目指してやってほしい」とエール。ファン・サポーターへの思いを聞かれると「ホンマに、セレモニーで全部言わせてもらいました。ただただ、ありがとうです」と締めくくった。

取材◎石倉利英 写真◎J.LEAGUE


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