Jリーグ30周年のシーズンが、2月17日に開幕する。そこでサッカーマガジンWEBでは、Jリーグ開幕特集として「2023年に注目すべき23人」を紹介していく。まずはオフに新天地を求めた移籍組の「7人」を取り上げる(1人〜7人目/23人)。

上写真=2023シーズンに注目したい移籍組7人! 左から柿谷、河原、佐野、仲川、仙頭、小野瀬、半田(写真◎J.LEAGUE)

文◎北條 聡

チームの出来を左右する移籍組

 Jリーグ30周年に当たる新シーズンが、驚きと発見に満ちたものになるかどうか。それを左右する大きな要素の1つが新戦力、なかでも活躍の場を新天地に求めた移籍組は目の離せない存在だろう。彼らの働きが予定調和を切り崩し、チームをまだ見ぬ高みへ押し上げる――。そうした期待を背負う選手たちの中から「七人のサムライ」を選りすぐり、見どころを探ってみたい。

◇ 仲川輝人(FC東京/FW)
個人タイトル二冠の再現を!

  FC東京の攻撃力を格段に引き上げる韋駄天。決め手を欠いてきた右の翼にピタリとはまる格好のピースだ。縦に仕掛ける突破型のウイングで、アシスト量産への期待は大きい。

 もっとも、最大の値打ちは“点が取れる”ことにある。機を見て鋭いカットインから鮮やかにネットを揺らす独自の型を持つ。そのうえ、ラインブレイクの破壊力も秀逸で、チームの武器である最後尾からのロングパスとは相性抜群だ。ケガがなければ、横浜F・マリノスを優勝へ導き、MVPと得点王の二冠を手にした2019年の再現も夢ではない。

なかがわ・てるひと◎1992年7月21日生まれ、神奈川県出身。2019シーズンにゴールを量産して得点王に輝き、横浜FMの優勝に貢献。リーグMVPも受賞した。昨季はケガで常時出場はかなわなかったが、新天地はそのスピードを生かし、チームを引っ張りたいと話す。160センチ、57キロ

◇ 仙頭啓矢(柏レイソル/MF)
IQの高さと小屋松とのコンビは大注目

 柏の“頭脳”となりうる新参者。ピッチの至るところに現れ、巧みにパスを出し入れしながら、チームを前進させる。その手際は見事の一語だ。数多くの情報を速やかに処理し、適切な解を導くサッカーIQの高さが光る。周囲との連係が密になるのも時間の問題か。

FW小屋松知哉は高校時代からの盟友で、京都サンガF.C.やサガン鳥栖でも共闘した間柄。その再会がもたらす相乗効果は大きなメリットだろう。昨季(名古屋グランパス在籍)の出来は尻すぼみに終わっただけに、逆襲に向けて静かに牙を研いでいるはずだ。

せんとう・けいや◎1994年12月29日生まれ、大阪府出身。リーグ屈指のチャンスメーカーは、まだ28歳ながら柏で所属が5クラブ目。それだけ多くの経験を積んでおり、若い選手の多いチームを引っ張ることが期待される。京都橘高、京都、鳥栖で共にプレーした小屋松との連係も注目。171センチ、64キロ

◇ 小野瀬康介(湘南ベルマーレ/MF)
周囲との化学反応が大きな見どころ

 湘南の新たな風として期待される実力者。よく攻め、よく守り、よく走る。まさしく質実剛健。常にチームを優先する利他的な振る舞いと、複数のポジションをこなすマルチ対応の特典付きだ。G大阪では右ワイドのポジションを主戦場にしてきた。

むろん、ウイングバックの適性も十分だが、湘南では中盤の右インサイドに抜擢される見込みだ。それがもたらす化学反応は見どころの一つ。周囲とのつながりを含め、興味がふくらむ。ここ数年、ピッチ上でくすぶり続けたうっぷんを晴らすか。この好機、逃しはしないはずだ。

おのせ・こうすけ◎1993年4月22日生まれ、東京都出身。豊富な運動量と万全性が持ち味で、シーズン前の練習でも複数のポジションでプレーし、チームを活性化させていた。ガンバ大阪時代にコーチだった山口智監督のもとで、「勝たせる」存在となることを誓っている。176センチ、65キロ

◇ 佐野海舟(鹿島アントラーズ/MF)
泣く子も黙るボール回収力は必見

 鹿島が町田ゼルビア(J2)から引き抜いた凄腕の刺客。売り物は泣く子も黙るボール回収力だ。ひとたびピッチに立てば、根こそぎ刈り取っていく。事実、昨季の1試合平均におけるボール奪取数はJ2最多の20を数えた。機に乗じた攻撃参加も鋭いB2B(ボックス・トゥ・ボックス)型で、ドイス・ボランチの一角なら十分に計算が立つ。

もっとも、現時点ではアンカーでの起用が検討されている。広域カバーはお手のもの。ビルドアップの起点としても機能する目途が立てば、攻守の歯車を回すキーパーソンへ躍り出るはずだ。

さの・かいしゅう◎2000年12月30日生まれ、岡山県出身。米子北高から町田に加入し、ボール奪取に優れるボランチで、2019年のプロ1年目から出場を続けてきた。移籍により三竿健斗が抜けた穴を埋めることのみならず、プラスアルファをもたらす存在として期待される。176センチ、67キロ

◇ 河原 創(サガン鳥栖/MF)
長短自在のパスを見逃すな!

 J1へ「個人昇格」を果たした最新型ピボット。長短かつ緩急自在のパスワークをもって、鳥栖の新たな羅針盤に名乗りを挙げる。昨季はロアッソ熊本のキャプテンとしてフルタイム出場。さらには精密なキックを生かしたセットピースを中心にJ2最多の12アシストを稼ぎ、年間ベストイレブンにも選出された。

 注目すべきは局面を一変させるサイドチェンジと一発で敵の急所を突くタッチダウンパス。小柄だが、スケールの大きなプレーでスタンドを沸かせる。J1の水に慣れれば、鳥栖の攻撃を一段とカラフルなものにするはずだ。

かわはら・そう◎1998年3月13日生まれ、熊本県出身。大津高、福岡大を経て、2020年に当時J3だった熊本に加入。そこから3シーズンはリーグ戦全線に出場してきた鉄人で、かつ正確なキックでチャンスを創出するコンダクター。ここ2シーズンはフル出場を果たした。169センチ、65キロ

◇ 半田 陸(ガンバ大阪/DF)
モダンなSBの理想形に刮目すべし

 ガンバが待ちわびた本格派の右サイドバック。次期日本代表の呼び声高いパリ五輪世代の逸材でもある。スペイン人のダニエル・ポヤトス新監督が求めるポジショナルプレーのイロハは古巣モンテディオ山形(J2)で習得済み。1対1の対応を含め、守りは手堅く、ゴール前に攻め上がれば、やすやすとポケットに忍び込み、多彩なクロスを蹴り分ける。攻守に隙の見当たらない仕上がりはモダンなサイドバックの理想形と言ってもいい。

 あとは早い段階で右ウイングとの“共犯関係”を取り結び、その実力を満天下に示すだけだ。

はんだ・りく◎2002年1月1日生まれ、山形県出身。山形時代、17歳でトップデビューを果たし、J2では4シーズンで92試合に出場したサイドバック。今季が自身初のJ1ながら、プレー経験は豊富だ。ユース年代の代表に名を連ね、パリ五輪出場を目指すチームの主軸の一人。176センチ、63キロ

◇ 柿谷曜一朗(徳島ヴォルティス/FW)
飛躍の地で見せるか、大復活劇!

 希代のファンタジスタが新天地で復活を期す。名古屋を離れ、向かった先は徳島だ。若手時代に飛躍への足がかりをつかんだ思い出の地である。実に12シーズンぶりの復帰。それも、完全移籍だけに決意のほどがうかがえる。1月に33歳。昨季はケガの影響もあって出場機会を減らし、無得点に終わった。それでも鋭いアクションと奇想天外なトリックは健在だ。

 今季はトップ下で起用される機会が増えそうだが、点に絡む仕事に変わりはない。超絶技巧で観る者をあっと言わせ、古巣をJ1昇格へ導くか。その一部始終を見届けたい。

かきたに・よういちろう◎1990年1月3日生まれ、大阪府出身。言わずと知れた日本屈指のテクニシャン。C大阪でも名古屋でもその技巧で見る者を魅了した。12年ぶりに自身が飛躍したチームに完全移籍で帰還。昇格を目指すチームの牽引車として期待される。176センチ、68キロ


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