9月10日の明治安田生命J1リーグで注目は、3位の川崎フロンターレが2位のサンフレッチェ広島を迎えた上位対決だった。前半は緊迫の時間が続いたが、終わってみれば川崎Fが4ゴールを集めて圧勝。再び2位に浮上した。

上写真=知念慶の自身3試合連続ゴールで3-0。このあとも1点を加えて川崎Fが圧勝した(写真◎J.LEAGUE)

■2022年9月10日 J1リーグ第29節(等々力/20,873人)
川崎F 4-0 広島
得点者:(川)家長昭博2、脇坂泰斗、知念慶

画像: ■2022年9月10日 J1リーグ第29節(等々力/20,873人) 川崎F 4-0 広島 得点者:(川)家長昭博2、脇坂泰斗、知念慶

「おめでとうと称賛したい」とスキッべ監督

 狙いは「左」だった。

 川崎フロンターレはサンフレッチェ広島の3センターバックの右に立つ住吉ジェラニレショーンの横、右ウイングバックの野上結貴の背中側のスペースを、左ウイングのマルシーニョの突破力とコンビネーションで突き崩していく。広島は川崎Fの右サイドバック、山根視来が攻め上がった後ろに、左シャドーに入ったエゼキエウを何度も走らせて起点を作ろうと狙った。

 先に実らせたのは、川崎F。34分に左の脇坂泰斗からインサイドで受けたマルシーニョがワンタッチで裏に流し込むと、走り込んだ佐々木旭がマイナスへ、右から中に入ってきた家長昭博がゴール右に流し込んで、先制ゴールを決めた。この前の時間帯から川崎Fが素早いテンポで前後左右にボールを動かして広島を大きく揺さぶっていて、完全に崩しきった上でのゴールだった。

 前半が終わるまで試合が引き締まったのは、GKのファインセーブのおかげでもある。この直後の36分に脇坂のスルーパスで左を割ると、走り込んだマルシーニョが狙ったものの、大迫敬介が鋭い飛び出しでストップ。川崎FもGKチョン・ソンリョンが24分に右からのCKが中央に流れてきたところを川村拓夢が引っかけるように左足で狙い、タイミングを外されたものの、かき出した。

 後半にテコ入れしたのは、何度もマルシーニョに自由に走られた広島のほう。右ウイングバックに満田誠を、右のシャドーに森島司を投入すると、2人の機動力で前に出ようとする意図がピッチに表れた。特に守備に強みを見せる野上から満田への交代は、攻撃への意欲の表れだった。

 ところが、またもここが川崎Fのホットスポットになったのだ。58分、左から佐々木が満田をドリブルで破って一気に中央へ入ってシュート、これが右に流れて広島のスローインになった。川崎Fはこれを奪ってつなぎ、橘田健人がゴール中央へドリブルで入って左へ、マルシーニョがワンタッチで中に入れると、脇坂が落ち着いてターンしてから左ポストに当てながらもゴールに送り込んだ。59分の追加点だ。

 3点目も「左」。中央から山根視来が左の裏にループパスを送り、脇坂が胸トラップから切り返したところを住吉に足をかけられてPKに。68分に知念慶が右に蹴り込んで、自身3試合連続ゴールで3-0とリードを広げた。そして、78分のとどめも「左」。佐々木がジョアン・シミッチとのワンツーで左を抜けて深くまで入り、一度止まることで寄せてきた満田の足も止め、その瞬間を見計らって中へ、マルシーニョがファーを狙ったシュートは大迫が横っ飛びではじいたが、こぼれ球を家長が左足でずばりと突き刺した。

 敗れたミヒャエル・スキッべ監督は「川崎フロンターレにおめでとうと称賛したいと思います。彼らの勝利に値するゲームだったと思います」「大事なのは今日の相手は本当に素晴らしいプレーをしたこと。リスペクトしたい」と素直に敗戦を認めた。後半から右サイドの縦の2人を、攻撃的な満田と森島に入れ替えたことについては「フレッシュな選手を入れて中盤をしっかり構成しようと思った」という狙いだったという。

「森島も満田もいい役割を果たしましたが、相手の圧力に負けてしまいました。彼らが負けたというより全体的に負けたので、今日は川崎が妥当な結果を手に入れたと思います」

 圧勝した川崎Fの鬼木達監督は、左サイドの攻略については、まず中央の狭いところを突いた次の段階として狙っていたことを示唆した。

「マルシーニョの特長を生かすこともそうですが、言いづらいこともありますけど、そこに人数がかからないように相手を引き出す作業をほかの選手がやってくれました。知念のところでボールが収まって相手が引っ張られるケースもあって、そのことで空いてくる場所はいくつか出てきます。そこをより強く意識して、マルシーニョの背後も空きました」

 プランをしっかり遂行した上での圧勝劇。2位に浮上して、横浜F・マリノスを勝ち点3差のまま追いかける。

「ここからアウェーの2試合が大事なので、気を引き締めて戦っていきたい」

 鬼木監督は笑顔よりも、引き締まった表情だった。

 現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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