上写真=長谷川健太監督が珍しく、選手起用を事前に宣言。長友佑都を先発で使うことを堂々と明かした(写真提供◎FC東京)
「改めて彼に元気を彼にもらっています」
長友佑都効果は明らかだった。
「合流初日から決勝戦前のような緊張感のあるトレーニングをしてくれました。相乗効果というか化学反応が起きていろいろな選手が締まって、やらなければいけないという気持ちになりました。練習が緊張感あるものになって、存在感の大きさを改めて感じました」
その「化学反応」は、味の素スタジアムのピッチの上でこそ起こしてもらわなければならない。9月18日のJ1第29節横浜FC戦で「体調が急変しない限り、100パーセント出場すると思っていただいていい」と明言したのだ。しかも「スタメンで起用しようと思っています。それ以上は言えませんが」とも。
選手起用について事前に明かすことはほとんどしないのが通常だが、あえて宣言した。そこに、長谷川監督なりの考えも透けて見える。
久々にホームに戻ってきた前節は柏レイソルに0-1で敗れた。それも、開始9分と早い時間にGK波多野豪とDF渡辺剛の連係ミスで、柏のFWを細谷真大にボールをかっさらわれて決勝点を奪われたのだ。長谷川監督もきちんと整理して2人と話したという。
「もちろんあのシチュエーションでは波多野が声を出したので、キーパー主導で対応すべきです。ただ、渡辺もいくら声がかかったとしても自分の判断で間に合わないのであればクリアしなければいけないと話をしました」
同じミスを繰り返さないためのマネジメントだが、独特な事情もあったようだ。
「ただ、あそこでイレギュラーがあったのはあったんです。水をまいていたこともあってバウンドが伸びて波多野のところに入っていく軌道だったのですが、芝生を張り替えた状況でイレギュラーがあって。試合前のアップの中で想定して気をつけようと話はしていたようですが」
東京オリンピック・パラリンピックのあとに芝生を張り替えたことで、ピッチコンディションが読みきれなかったということだった。
「久々のホームということですが、そういう部分でわからなかった部分もありました。準備力という言葉もありましたが、準備不足だったことは確かで、今後は同じようなことがないようにしていきたい」
その「準備力」という言葉は、「世界基準の準備力を後輩たちに伝えられると思っています」と長友が復帰会見で話したフレーズだ。長谷川監督自身も長友から刺激を受けているようで「改めて彼に元気を彼にもらっています」と快活さが増した印象だ。
「元気のある選手が一人いると、我々もいい意味で刺激を受けて、もっともっと熱を持ってやらなければいけない思いにさせてもらいました」
長友を先発で起用すると明言したのは、まさにこの「熱」をクラブ全体に広げるためだろう。柏戦でき起きたミスも、1点のビハインドを取り戻すことができなかったのも、勝利への情熱が欠けていたからだと指摘している。だから、残り10試合でAFCチャンピオンズリーグ出場権内の3位に浮上するために必要なプラスアルファを注入するべく、長友佑都というケミストリーを存分に生かすつもりだ。