どこまで伸びるのか、末恐ろしい。川崎フロンターレの最強マルチロール・プレーヤー、旗手怜央が絶好調だ。いま、充実の毎日を送っているのだと話して目を輝かせ、自らのさらなる成長を楽しむ姿はすがすがしい。

サイドバックとインサイドハーフ

「とても充実した日々を送れています」

 旗手怜央の目が輝く。登録はFWなのに左サイドバックで開幕したと思えば、インサイドハーフで攻守に獅子奮迅、交代策によっては左右のウイングに入ったりもする。天下無双の川崎フロンターレが誇るマルチロール・プレーヤーに成長した。

「(複数ポジションでプレーすることの)難しさは減ってきていますし、時間帯によって求められることは整理できています。困った部分はあまりないですし、チームのために必要とされている使われ方をしているのは分かりますから、チームのためにやりたいです」

 ケガのために4試合お休みしたが、それ以外はすべて先発出場だというところに、鬼木達監督の絶大なる信頼がにじみ出る。

「ポジションが変わっても攻撃では特に変わらないですね。守備では変わるところがあるので、そこを整理していれば連戦でポジションが変わってもすんなり困らずできます」

 涼しい顔で、一人何役でもこなしてしまう。

「もっともっといろんなポジションができればいいと思っています」

 今年のうちに、GK以外なら本当にどこでもこなしてしまうような勢いである。

最初に抱きついたことが意味するもの

 直近のJ1第13節ガンバ大阪戦では久々の左サイドバック起用だった。その安定感と意外性のコンボは旗手ならでは。70分に左サイドバックに登里享平が入ると、今度はインサイドハーフの右に入って勇躍する。

 76分の2点目はこの人のパワフルなボール奪取から。カウンターを仕掛けてきたG大阪のレアンドロ・ペレイラがこちらの陣内に入るところに追いかけていって、低い体勢で背中側から足を伸ばしてファウルなしでボールに絡めた。車屋紳太郎が拾って田中碧から登里へ、そこからこれもまたパーフェクトなのだが、ゴール方向に向かうようなスピンをかけた浮き球で時間と空間を操ったパスを前のスペースに落とすと、三笘薫がそのまま持ち込んで決め切った。

「相手に奪われてすぐに相手のカウンターが始まりそうなときでしたけど、普段からチームで攻守の切り替えを言われているし、奪い返すことは求められています。日頃から意識しているプレーが出たことが良かったのではないかと思います」

 旗手はスライディングのあと立ち上がり、そのままゴールに向かっていって、決めた三笘に一番に抱きついた。単なるセレブレーションではない。同期との抱擁が意味するのは、奪ってから迷いなくゴール前に詰めていく、連続性の強度の高さ!

「薫が最初に抜け出して一度スピードを落としたときに、中に入ったらもらえるかもしれないと思ったんですけど、アイツ、もう1回スピード上げちゃったので、ついていけないやと(笑)。だからキーパーの弾いたボールを狙おうと詰めていったけど、そのまま決めたので、寄っていきました」

 これで川崎Fは13勝2分けと圧倒的。早くも10ゴールを挙げたレアンドロ・ダミアンや相変わらずの突破力で相手を意気消沈させる三笘が目立つが、去年から明らかにパワーアップしている背番号47こそ、まさに屋台骨ではないか。

「試合に出ているからこそ爪痕を残したいという意味では、結果としてゴールやアシストを増やしていかないといけないし、攻撃の精度を高めないといけないです。すごくできているところもあり、できていないこともあり、非常に充実した日々を送れているというのがありますね」

 さて、ここからどれだけ伸びていくのか。まだまだ「天井」は見えない。


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