上写真=「守備ではがむしゃらに追いかける」と高野遼。再開初戦と同じ上海上港と再戦するが、もう一度勝つつもりだ(写真◎Y.F.M)
勢いそのまま!
鋭角クロスが横浜F・マリノスを救った。11月25日のACL再開初戦。0-0で進んだゲームがそのまま終わるのではないかと思われた90分に、高野遼の左足がキラリと光った。
左サイドで縦にぐいっと出てから高速クロスをゴール前へ送った。中央で仲川輝人がヘディングシュート、GKが反応して手で弾いたが、こぼれたところに天野純が詰めていて、そのままプッシュ。貴重な貴重な決勝点が生まれた。
何より高野のクロスだ。右足で外側に持ち出して相手がボールに触れない距離に置いてから、腰を鋭く斬るようにして左足で上げた鋭角のクロス。
「こだわりがあるわけでも、練習をすごくしたわけでもないですけど、昔からあの形は持っていました。自分でもあんなに外に持ち出している実感はなくて、クロスも流れで蹴ることが多いので、考えて蹴っていないんです。勢いそのまま、と言ってしまうものなんですけど、本当に感覚ですね、あれは」
そう言って笑うが、勢いで持っていけてしまうだけの体幹や腰のキレ、立ち足の強さと右足の振りのスピードを持っているということだろう。
「自分の勢いに負けちゃいけないので、うまく体を流して蹴らなければいけなくて。足の振りも速いと思うので、一歩間違うとゴールライン割ってしまうからそこは気をつけていますね」
この強烈なクロスを習得したのは「中学生か高校生かぐらい」とのことだが、「右足でかき出して相手より一歩速く出られるのは、いまのコーチであるリキさん(松橋力蔵)に教わったのを覚えています」。松橋コーチはかつて横浜マリノス時代にMFとして活躍、のちにユースの監督を務めたときに高野の成長を見守った。横浜FMのアカデミー出身の高野が受け継いだトリコロールの遺伝子が、あの場面で花開いたと言えるだろう。
左サイドバックが主戦場だが、途中からピッチに出るときにはウイングとしてその切れ味鋭い左足に期待されている。まさにジョーカーだ。
「もともとうまくやるタイプでもなくて、サイドバックでもウイングでもそういうプレーヤー寄りだと思いますけど、ウイングのほうがシンプルになるのかな」と自己分析。「後ろでも前でも得点に絡むプレーを増やしたいと思っています。Jリーグのときのようにクロスから点につながったり、中に入って攻撃に絡んだりしていきたいです。得点に絡むプレーは常に気にしているので、明日も変わらず意識していきたい」と攻撃サッカーの中で自分を生かす意欲にあふれている。
そうなると、あの高速クロスを見舞ったパンチのあるキックを、シュートでも見てみたい。
「もちろんそればかり意識することはなかなかないですけど、試合の状況だったりスペースがあれば自分もどんどん狙っていきたいと思っています」
クラブのDNAを宿した左足が輝くほど、頂点に近づいていくだろう。