上写真=移籍発表翌日の10月24日FC東京戦で早くもベンチ入りを果たした(写真◎J.LEAGUE)
「飛距離でひっくり返すのは自分の武器」
高丘陽平が、故郷である横浜に帰ってきた。
「家族もこちらにいますし、友人も多くいる生まれ育った土地です。小机の練習場もそうですが、中学生のころから知っている場所でプレーできるのは喜びです。なかなかない機会だから、チャンスをつかみ取れるようにやっていかなければいけないと思います」
横浜FCのアカデミー育ちのGKが10月23日、サガン鳥栖からの完全移籍で横浜F・マリノスに加入することが正式発表された。同日に移籍登録も済ませ、翌24日のFC東京戦にいきなりベンチ入り。4-0の快勝の一員になった。
「去年のチャンピオンで戦術が固まっているところに来たので、自分がどういう能力をプラスアルファでできるかが大事なポイントです。みんな気さくに話しかけてくれますし、入ってきた感想としてはとても良いです」
というのが、新チームへのファーストインプレッションだ。
J1リーグでは昨季、鳥栖でデビューして24試合にプレー。今季は守田達弥とポジションを争いながら、16試合、1440分を守った。経験を積み始めたところで、将来が嘱望される。アンジェ・ポステコグルー監督も「若くていい選手ですね。いろいろと見ながらこのサッカーを学ぶ時間が大事になるので、しっかりと時間を与えながら考えていきたいと思います。いい感じでやってくれると思うので期待しています」と話す。
梶川裕嗣、中林洋次、 27日に育成型期限付き移籍先の栃木SCから復帰したオビ・パウエル・オビンナとポジションを争うことになるが、いまのチームに加えたい「プラスアルファ」とは?
「F・マリノスのスタイルであるボールをていねいにつなぐところは持ち味にしています。テンポを作ることと、プラス、飛距離でひっくり返すのは自分の武器でもあって、ミドルパスで相手の背後や手前に落とすのは自分の持ち味です。もちろん、しっかりゴールキーピングの部分も出していきます。止めることができないと勝てないので、そこで力を出したいと思います」
小さくつないでも大きく蹴っても、攻撃の第一歩になる。現代サッカーで基本中の基本となる性能は当然しっかり備えている。特に「背後や手前に落とす」という微妙な蹴り分けは、幅広く特徴を持った強力なアタッカーを揃えるこのチームにはうってつけだろう。
この時期の移籍は例年では認められておらず、今年はコロナ禍によって特例として認められた「第3の移籍ウインドー」を利用した形だ。だからこそ、鳥栖への感謝も忘れない。
「鳥栖でもポジション争いをしながらある程度の試合に出させてもらいましたが、自分の中でも少しずつ環境を変えてチャレンジしたい思いがあったことは事実です。そのタイミングで声をかけていただいて、鳥栖からすれば10月に出ることはよくないことだと思って悩みましたが、最終的にはクラブが意思を尊重してくれました」
こうしてトリコロールの一員となったが、今季はリーグ戦はあと6試合で、2位以内に入れば天皇杯は準決勝から出場、ほかにアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で少なくともグループステージの4試合が待っている。シーズンの最終盤に加わったことで、逆に目標は明確だ。
「まずはリーグで2位を狙える位置にいるので、残り試合は少ないですけどしっかり勝ち続けていくのが一つの目標ですし、ACLで優勝を狙っているのでピッチで貢献したい思いが強いです。どれだけ力を発揮できるかがポイントになってくると思います」
強くても新陳代謝を忘れずに、新しい戦力を加えて貪欲に進化を求めるクラブの象徴的存在になった。自慢のキックで王者の座を射止める意欲は高まるばかりだ。