上写真=戦力アップの実感を喜んでいる。負傷者復帰がブーストになる(写真◎FC東京)
「個性がぶつかり合う試合になる」
FC東京の夏は、二重の意味で苦しかった。暑さと過密日程はすべてのクラブが同じ厳しさを味わったが、首都のクラブは主力の負傷と海外移籍でチームの再構成を余儀なくされた。8月にそのベースを作るという目標を立てた長谷川健太監督は、基準となるメンバーで4-3-3のアンカーシステムを安定させ、そこに若手を加えてなじませるという作業を実行してみせた。結果こそ3勝2分け2敗とかろうじて勝ち越している状態だが、手応えは十分だった。
そして秋へ。明るい兆しはいくつもある。まずは、7月に左肩を負傷して離脱していた田川亨介の復帰。
「チームにとっては非常に大きな戦力の積み上げになると期待しています。(復帰戦となった前節の)大分戦ではある程度できましたが、ポテンシャルを考えるとまだまだコンディションを上げていってほしいですね。活躍に期待しています」
ターンオーバーの関係もあっていきなり先発で復帰させ、4-3-3の右ウイングとして55分間、プレーさせた。
「三田(啓貴)も非常にインテンシティの高いプレーを長くできるようになってきたので、大きな戦力アップになっています」
大分戦前日の会見では、三田に「持続的な強さ」をさらに求めていくことを明かしていたが、67分間のプレーで監督の評価も高まった。
「そして、(中村)拓海もだいぶ自信を持って右サイドでやれるようになってきました」
移籍した右サイドバックの室屋成の後を襲う人材として、中村帆高とポジションを争う中村拓海はリーグ戦4試合連続で先発中。卓越した攻撃のセンスはディエゴ・オリヴェイラとも響き合っていて、独特のサイドアタックを実現させている。
「トレーニングはみんな一緒にやっていますので、共通理解の下でできています。ある程度、固定したメンバーで8月の中旬ぐらいまでは戦って、試合に出た選手の動きを見て、出てない選手にもイメージができてきて、それをさらに良くするために実際の試合でこうすればいいのかと判断して経験を積めるようになりました」
そんな好循環は「災い転じて福となす」と言えるかもしれない。とはいえ、シーズンはまだ半ば。JリーグYBCルヴァンカップでベスト4に進出し、アジア・チャンピオンズリーグの予定もあって他のクラブ以上に日程は厳しい。一つひとつ、勝ち点を稼いでいくしか上位追撃の方法はないだろう。
その意味で、いま何よりも大切なのは、次の横浜FC戦での勝利だ。
「自分たちのやり方を出せているのではないか。横浜FCのサッカーはこうである、というものは、試合を見て感じられます。それに結果もついてきていますから、難しい試合になると思います。J2から上がってきてJ1への戸惑いが多少はあったかもしれませんが、いまは慣れてきて自分たちのサッカー表現できています。ビルドアップはうまいし、前線に若いタレントがいますし」
そのタレントについては、「両サイドの松尾(佑介)や松浦(拓弥)、前線の一美(和成)、皆川(佑介)、斉藤(光毅)と、個の力を持った選手が育っています」と具体的な名前を挙げるほど、警戒心を強めている。
「横浜FCはチームの個性があります。その個性がぶつかり合う試合になるのではないか」
FC東京はFC東京のやり方で、勝利を目指すだけだ。