上写真=大分戦で復帰した田川。ここから出番が増えそうだ(写真◎FC東京)
「ゴールという結果を残さないと」
田川亨介の復活の舞台は、9月5日のJ1第14節、アウェーの大分トリニータ戦だった。
「久しぶりにピッチに立って、みんなで一体感を持って戦えたのは懐かしい感覚で楽しかったですね。それが最初に来た感情でした。でも、コンディションはまだまだなので、これから試合に出ながら上げていければと思います」
2カ月ぶりのピッチの感触を楽しんだのは、55分間。「一体感」といういまのFC東京を支える前向きな空気を味わいながら1-0の勝利に貢献した
7月12日の第4節、横浜F・マリノス戦で開始早々の17分に交代してから、しばらくピッチを離れなければならなかった。右からの室屋成のセンタリングに合わせてゴール前に走っていったところを、後ろから足をかけられ転倒。伸ばした左腕がボールに乗ってしまったことで、肩に大ダメージを負った。すぐに左肩を右手で抑えて浮かべた苦悶の表情が、事の重大さを物語っていた。このファウルによって獲得したPKをディエゴ・オリヴェイラが決めて1-1に追いつき、結果的に3-1で逆転勝利を収める反撃ののろしとなったのだが、左肩関節脱臼という診断で代償は大きかった。
FC東京はこの田川の負傷から、同じ7月に宮崎幾笑、東慶悟も負傷離脱、8月には橋本拳人と室屋成が移籍して、チームを再構築する必要に図られた。すると、田川がリハビリに集中する間に4-3-3システムが安定し、結果も伴ってきた。再浮上に成功したチームを見て「特に焦りは感じなかったですね。自分のことしか考えていなかったです」と笑ったが、大事なのは守備だと仲間たちを観察して感じていた。
「守備のところで求められることが多くて、それができているので使ってもらったと思っています」
復帰戦を先発で飾った意義をそうとらえているが、やはり持ち味は攻撃だ。負傷した横浜FM戦では4-4-2の左サイドハーフ、復帰した大分戦では4-3-3の右ウイングと、場所や役割にはとらわれない奔放さは魅力的だ。
「改めて守備をやっているから使ってもらえると思うので、あとはゴールという結果を残さないと。結果を出している選手がいるので、争う意味でもそうしたいです」
そう繰り返すのは、ディエゴ・オリヴェイラ、永井謙佑、レアンドロ、アダイウトンという強烈なFW陣に加え、リハビリ期間に原大智、内田宅哉といった同世代も登場したことが刺激になっているのだろう。ゴールへの意欲を隠さない真っ直ぐさはすがすがしい。そのための武器は、これ。
「カウンターのところで、一番はスピードに乗って抜けていく動きがありますし、左利きなのでシュートの形をたくさん作っていきたい」
横浜FM戦で負傷したシーンでは、相手守備陣の間を左から右に斜めに入ってゴール前に飛び込んでいくスピードに相手がついてくることができなかった。復帰した大分戦では右サイドから中央に入っていくことで、右インサイドハーフの三田啓貴や右サイドバックの中村拓海がプレーしやすいようにスペースを作り出した。シュートはゼロだったものの、存在感は負傷する前と変わっていない。
過密日程の中での待望の復帰。周囲からの期待も増すばかりだが、「感じるところはありますけど、そこはあんまり気にせずというか、自分にフォーカスしてやるべきことを考えていこうと思っています」と自然体。
次節はホームに横浜FCを迎える一戦。「前からどんどん守備をして、攻撃のときに追い越して参加していく役割は変わりません」。ここまで出られなかった分も、の思いを込める。