AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージ(GS)第2戦が4日、行われた。H組のヴァンフォーレ甲府は国立競技場にブリーラム・ユナイテッド(タイ)を迎え、初のホームゲームを開催。試合終了間際に長谷川元希がヘディングシュートを決め、ACL初ゴールとともに、記念すべきACL初勝利を手にした。

上写真=90分にヘディングでゴールを奪った長谷川元希(写真◎Getty Images)

■2023年10月4日 ACLグループステージ第2節(観衆11,802人@国立競技場)
甲府 1-0 ブリーラム
得点:(甲)長谷川元希

よく走りよく戦った末に待っていた歓喜!

 普段、使用しているJITリサイクルインク・スタジアムはACLの開催基準を満たさないために、甲府にとってACLでの初のホームゲームは国立競技場で開催された。国立競技場は甲府にとって広島をPK戦の末に下し、天皇杯に優勝して今季のACL出場権を手にしたゲンのいい場所。甲府から駆けつけた多くのファン・サポーターの声援を背に受けて序盤から積極的な姿勢を示していった。

 守備の局面では激しく当たり、ブリーラムのビルドアップに制限をかけてリズムを出させない。ひとたびボールを奪えば、縦方向に動かし、時折、サイドチェンジも交えてゴールを目指した。

 だが、ブリーラムの最終ラインをなかなか突破できず、いい形でシュートに持ち込めない時間が続く。サイドを攻略してクロスを入れてもボックス内に人が足らず、ポスト役のウタカとフォローに入る選手との呼吸が合わない場面もしばしば。一方でブリーラムの10番、ラミル・シェイダエフにドリブルで突破され、ゴールに迫られるなど何度かピンチを迎えたが、そこはGKマイケル・ウッドを中心に最終局面で体を張り、前半は0−0で終了。後半に勝負をかけることになった。

 後半最初のチャンスは甲府が作り出した。52分、敵陣で得たFKの場面。佐藤が右足で浮き球を送ると、ボックス内に飛び出した神谷がヘッド。相手GKシワラク・テッスンヌーンの好守に阻まれたが、惜しい場面だった。

 対するブリーラムも57分、同じくFKの場面で、かつて横浜FMや神戸でプレーしたティーラトン・ブンマタンが送ったボールをシュートにつなげ、ゴールに迫った。だが、甲府の選手たちが体を張って阻止。互いに譲らない気迫のプレーが後半も続いた。

 60分には三浦颯太が左サイドを駆け上がり、1つ内側のレーンにいた長谷川元希に横パス。長谷川は迷わず左足を振り抜いたものの、GKにキャッチされてしまう。

 66分には再び敵陣左で得たFKから長谷川がボックス内にボールを蹴り込み、その流れから井上詩音がボレーを放った。しかしこれも相手GKの正面をつく。

 後半、とくに60分過ぎからは甲府が押し込む場面が増えた。次第に空き始めたブリーラム陣内のスペースにボールを送り込み、ゴールへの道筋を探っていく。ただ、ブリーラムも甲府の攻め気を逆手に取って、一気に前進してゴールをうかがう姿勢を持ち続けていた。

 70分過ぎからは目まぐるしく攻守が入れ替わる展開となっていく。どちらにもチャンスがあり、どちらにもピンチがあった中で、ついにスコアが動いたのは90分だった。

 右サイドのスローインの流れからクリスティアーノが滞空時間の長いクロスを供給。ファーサイドで待っていた長谷川が相手DFよりも高く飛び上がり、ヘッド。ネットにシュートを突き刺した。

 ゴールが決まった瞬間、ベンチの選手たちも監督、スタッフも一斉に長谷川の元に駆け出していた。ゴール裏のサポーターの前で歓喜の輪ができる。その光景は、甲府がACLにかける思いの大きさを表していた。

 試合はそのまま1−0で決着。甲府がクラブ史上初めてACLでゴールを記録し、そして勝利を手にした。

 走り、戦い、攻めて守った甲府の選手たちの姿は平日の夜に国立競技場に集まった1万人超えのファン・サポーターを熱くさせたことは間違いない。タフな試合を戦い抜いてつかんだこの勝利は、クラブの歴史に永遠に刻まれることだろう。


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