上写真=お互いに攻撃で良い時間帯はあったものの、最後まで得点は生まれなかった(写真◎森田将義)
後半の選手交代で活性化
準決勝に進めるのはグループA、B、Cの1位3チームのみ(残る1チームはAFC女子チャンピオンズリーグ出場の三菱重工浦和レッズレディース)。I神戸は勝てば突破が決まるシチュエーションだったのに対し、C大阪は突破の可能性がない。初戦ではI神戸が2-0で勝利していたものの、I神戸のジョルディ・フェロン監督はメンタル面も含めた難しさを試合後、こう振り返った。
「立場が違うチームが対戦する試合で難しかった。相手は失うものがない。ウチは勝つために前に出ていくべきか、守り切るのか、時間の中で判断しなければいけなかった。そうしたこともあって、ボールに対してプレスに行けない時間があった」
I神戸が見せた守備の迷いを利用し、前半はC大阪が試合の主導権を握った。「前はすごく(プレッシャーに)来るけど、その後が来ないと分析していた。そこでボランチがはがしたり、ディフェンスラインとボランチの間で前を向ければチャンスができると思っていた」と明かしたMF荻久保優里と松本奈己のボランチコンビが、中盤でうまくボールを引き出し、相手DFの背後にパスを配球してチャンスをうかがう。
35分には最初の決定機。左サイドで見事なトラップを見せたFW田中智子がサイドチェンジを繰り出し、スピードで抜け出したFW浅山茉緩がゴールを狙ったが、シュートは枠の左へ。43分には荻久保のスルーパスから田中がゴール前にフリーで抜け出すと、切り返しからシュートを放ったが、GK大熊茜の正面を突いた。
自陣での時間が続いたI神戸は、前線で奮闘を続けたFW愛川陽菜を起点にチャンスをうかがったが、前半の見せ場はごくわずか。「選手たちは、このままではダメだと気が付いてくれたと思う」と振り返るのはフェロン監督で、後半開始とともに3人の選手を入れ替え、攻撃の活性化を図った。
1つ目のポイントはCBに入ったDF土光真代のプレーで、彼女の持ち運びや配球によって攻撃のリズムが生まれた。2つ目のポイントは、前線に入れたスペイン人ストライカーFWカルロタ・スアレス。175cmの大型だがスペースへの飛び出しにも優れ、C大阪のゴール前に迫る回数が増えた。荻久保が「前に(パスを)つけられないように守備をしてきて、ボランチを消されていた」と振り返ったように、チーム全体の守備強度も高まり、C大阪の中盤に自由を与えない。
59分にはリスタートをキャッチした大熊が左サイドに素早く展開。受けたMF成宮唯がスアレスに預け、リターンから右足でゴールを狙ったが、間合いを詰めたDFに阻まれた。66分には左サイドでのスローインから、ゴール前にこぼれたボールをDFカルロ・モレラが左足で狙うも、GK名和咲香に防がれる。
C大阪の鳥居塚伸人監督は「やってきたことは、コンパクトなフィールドを自分たちでどれだけ作れるか。縦と横のスライドをしっかりやって、自分のマーカーをはっきりさせることを徹底する形で対応しようと思っていました」と語った。終盤には3バックに変更して守備を固め、名和が何度もファインセーブを披露。結局、最後までスコアが動かないままタイムアップを迎えた。
双方にとって収穫の多い勝ち点1となった。I神戸は他会場のジェフ千葉レディース-ちふれASエルフェン埼玉戦が引き分けに終わったために1位通過。WEリーグと皇后杯も含め、すべてのタイトルを目指すチームにとって価値は大きく、FW髙瀬愛実は「優勝するためにグループを突破するのが第一の目標だった。自力で決めたかったですけど、しっかり次のステージに進めたのはよかった」と語った。
C大阪も、荻久保が「いままで(I神戸には)負けてばかりだったのが、勝ち点1を取れたのはチームとしての大きな一歩。勝ち切りたかったけど、次に向けて良い試合ができた」と話せば、鳥居塚監督も「勝ち点3は取れなかったですが、INACさんから初めて勝ち点1を取れたことは一つの収穫だと思います」と続けた。敗退の悔しさはあるものの、この日の戦いぶりは今後の試合につながっていくはずだ。
なお、グループAはサンフレッチェ広島レジーナ、グループBはアルビレックス新潟レディースが1位となった。12月8日の準決勝はS広島R-浦和、I神戸-新潟Lの顔合わせで、12月8日に長崎県のPEACE STADIUM Connected by SoftBankで行なわれる。
取材・写真◎森田将義