上写真=敵地でI神戸を下し、現地まで訪れたファン・サポーターをバックに記念撮影する浦和の選手たち(写真◎森田将義)
■2024年5月18日 WEリーグ第21節(@ノエスタ:観衆3,064人)
I神戸 0-2 浦和
得点:(浦)角田楓佳、清家貴子
「3強から抜け出したい」
5月10日にAFC女子クラブ選手権を制した浦和は、12日に行なわれたWEリーグ第20節で2位のI神戸が敗れたため、2試合を残してのリーグ連覇も決定。今節は消化試合と言っても過言ではなかったが、浦和の楠瀬直木監督はこう振り返る。
「非常に難しいシチュエーションでのゲーム。I神戸が意地を見せてくるのではと想定して一生懸命、集中しなければと思っていた」
対するI神戸は勝てば2位が確定、ホーム最終戦でもあり、ジョルディ・フェロン監督は「ホームで戦うにあたり、勝ちたかったので、いろいろ変えた」と明かす。来季に向けて戦い方の幅を広げるため、従来の3バックから4バックに変更して「今シーズン、一番成長した選手」と指揮官が評するDF竹重杏歌里を左SBで起用。得点ランキングトップを走る浦和FW清家貴子封じを狙いつつ、ハイプレスを仕掛けた。
「なかなか強度の高いゲームができた」とのフェロン監督の言葉どおり、I神戸のプランがうまく機能し、序盤から拮抗した展開が続く。それでも22分には浦和にチャンスが訪れ、MF伊藤美紀の左クロスを清家が落とし、MF角田楓佳がゴールを狙ったが、DFに当たってCKに。I神戸も23分、自陣からのロングボールが相手ゴール前に入り、MF北川ひかるが飛び込んだが、浦和GK池田咲紀子の体を張ったセービングに阻まれた。
試合が動いたのは29分。浦和DF高橋はながゴール前に入れたFKを清家がヘディングで折り返すと、そのままゴールラインを割りそうになったが、懸命に追ったFW島田芽依が足を伸ばしてゴール前に折り返すと、待っていた角田がWEリーグ初ゴールとなる先制点を決めた。
追い付きたいI神戸は後半開始から、ポストプレーに長けたFW髙瀬愛実を前線に投入。交代策によってFW田中美南が中盤に落ちてボールを引き出せるようになったこと、そして空いたスペースにFW愛川陽菜が飛び出すことで、試合の流れを引き寄せた。
「スキを見せると北川の飛び出しやDF守屋都弥のクロスが入ってくるので、油断できない」と浦和の楠瀬監督が語ったように、I神戸はサイドアタックも効果的。だが「2センターバックは強いなと改めて思いました」と楠瀬監督が称えた、DF石川璃音と高橋のコンビが最後の局面をきっちりつぶし、I神戸にシュートを打たせない。
それでも攻め続けたI神戸は69分、右クロスのこぼれ球から田中がシュートを放うも、ブロックに入った高橋に当たってCKに。71分にも田中がエリア内中央から左足で狙ったが、今度はクロスバーに阻まれて得点には至らない。
我慢の時間が続いた浦和は74分、DF長嶋玲奈が左サイドからゴール前へロングボールを送る。I神戸も何とかはね返そうとしたが、こぼれ球の落下点に入った清家がゴールに背を向けた状態から、浮いたボールをオーバーヘッドシュート。右ポストに当たりながらも鮮やかに決まってリードを広げると、そのまま2-0で勝利を収めた。
I神戸は浦和の8本を上回る11本のシュートを放つも敗戦。「うまく機能していたけれど、守備のほころびで失点した。浦和相手に2失点すると、ひっくり返すのは難しい」と口にしたフェロン監督は、身長や強さなど、浦和とのフィジカル面の差を感じたと口にした。
浦和は「この試合が日本の女子サッカーを引っ張っていく」(楠瀬監督)との覚悟で挑んだ一戦で手堅く勝利。今季すでに2つのタイトルを手にしているが、気の緩みは見られない。指揮官は「(この日の試合と)最終節を含めた2試合に勝たなければ、真のチャンピオンとは言えない。3強と言われている中から抜け出したい」と意気込み、最終節の日テレ・東京ベレーザ戦も白星しか考えていないことを強調した。
取材・写真◎森田将義