女子サッカーのオープン大会として長い歴史を誇るサッカーマガジンカップ・全国レディース大会が、今年も5月3日から5日まで長野県上田市の菅平高原で行なわれた。全国から集まった24チームが3日間の熱戦を繰り広げ、最終日となる大会3日目の5日は決勝トーナメント準決勝、3位決定戦、そして決勝を実施。ふたば未来学園高(福島)が悲願の初優勝を飾った。

上写真=優勝カップを掲げる、ふたば未来学園高。決勝ではテンポの良いパス回しとフリーランで松商学園高を圧倒し、文句なしの初優勝を成し遂げた(写真◎黒崎雅久)

大会を通じて成長を遂げた2チーム

 5月5日の大会最終日、決勝トーナメントは午前中に準決勝と3位決定戦、午後からサニアパークメイングラウンドにて決勝が行なわれた。

 準決勝では、ふたば未来学園高が、ここまで4試合でわずか1失点の堅守を見せてきた松本国際高の守備を見事に攻略し、6-1で勝利して決勝に駒を進めた。チームを率いる安齋和之監督は「今大会、決して思い通りの試合ばかりではなかったが、試合ごとにミスを反省して修正しながら、チームとして成長できた」と、右肩上がりに調子を上げたチームを称賛した。

 また松商学園高は、JUVEN FC FLORに先制しながらも追い付かれ、準々決勝に続いて2試合連続のPK戦となったが、苦しみながらも決勝進出を決めた。指揮官の梨子田幸治監督は「ウチは人数が少ない中、大会を通じてシステムなども変え、ポジションも変えながら、一人ひとりの可能性を広げながらチームを作ってきた」と語り、こちらも大会中にチームの成長を促し、選手がそれに応えての決勝進出だった。

 いよいよ決勝。ピッチは菅平高原が誇る、最高の状態の天然芝が映えるサニアパークのメイングラウンド。互いに大会を通じて成長曲線を描いてきた高校生チーム同士のファイナルの笛が鳴った。

自分のやるべきプレーを選手がピッチで考える

 拮抗した展開が予想された決勝だが、試合開始からふたば未来学園高が優勢に試合を進める。守備では相手のボールホルダーに素早く2人、3人が寄せるプレッシングでことごとくボールを奪い、攻撃に転じれば、アンカーの遠藤綾乃を中心に小気味良いパス回しで相手のプレスをいなしてチャンスを量産した。

画像: 大会の最優秀選手賞を獲得したふたば学園の遠藤⑤は絶妙なポジショニングと正確なボールさばきでピッチに君臨した(写真◎黒崎雅久)

大会の最優秀選手賞を獲得したふたば学園の遠藤⑤は絶妙なポジショニングと正確なボールさばきでピッチに君臨した(写真◎黒崎雅久)

 選手が、時にポジションを離れてでも流動的に動き、局面局面で常に数的優位を作り出す、ふたば学園高。安齋監督が「サッカーに正解はない。選手たちがピッチで考えるよう促している」と言う通り、選手同士が状況をよく見て判断できていることで程良い距離感をキープし、攻守にわたって数的優位を生み出し続けた結果が、ボール保持率の高さとチャンスの多さに表れた。

 だが守勢に回った松商学園高も、今大会で僅差の勝負をことごとく勝利につなげてきた粘り強さを最後の一戦でも発揮し、終始押し込まれながらも最後のところでは体を投げ出してゴールを守り、カウンターからの好機をうかがい続けた。

 攻めるふたば学園高、守る松商学園高の時間が続いたままスコアは動かず、0-0のまま前半を終えるかに思えた時間帯に、ついに均衡が破れる。前半終了間際、ふたば学園高のシュートを相手GKが弾いたこぼれ球にFW鈴木咲羅が反応し、ネットを揺らした。

 ふたば学園高はこの先制点を機に、後半に入るとさらにギアを上げて松商学園高陣内へと攻め込む。圧巻は右ウイングの高橋優だ。後半開始早々、味方が相手エリア付近でていねいにつないだパスを、的確なポジショニングで呼び込んでフィニッシュ。後半13分には左サイドからのクロスにワンタッチで合わせて自身2点目、後半18分にもゴール前に固まった相手守備陣をあざ笑うかのようなコントロールショットでゴール左上スミを射抜き、ハットトリックを達成した。

「今大会は、結果よりも自身の成長を意識してきました」

 殊勲の高橋もチーム同様、大会を通じての成長を目指し、決勝の舞台でその成長ぶりを示してみせた。

画像: 決勝の舞台でハットトリックの偉業を成し遂げた高橋。スピードも技術もあるストライカーとしてピッチで暴れ回った(写真◎黒崎雅久)

決勝の舞台でハットトリックの偉業を成し遂げた高橋。スピードも技術もあるストライカーとしてピッチで暴れ回った(写真◎黒崎雅久)

 終わってみれば5−0。ふたば未来学園高が堂々たる試合ぶりで初の頂点に立った。

「味方との距離感を大事に、ズレたらそこに誰かが入るし、全体が流動的に動くのがこのチームの特徴です。全員が常に考えてプレーするサッカーをしっかり出すことができました」

 アンカーとして攻守の中心的役割を担い、見事大会MVPに輝いた遠藤が明かす通り、個々がやるべきプレーを常に考え続け、トライ&エラーを続けた。試合をこなすごとに個が成長し、個の成長がチームの成長を生み出してきたふたば未来学園高が、37代目の女王の座に就いた。

【表彰チーム】

優勝:ふたば未来学園高校

画像1: 【表彰チーム】

準優勝:松商学園高校

画像2: 【表彰チーム】

3位:JUVEN FC FLOR

画像3: 【表彰チーム】

4位:松本国際高校

画像4: 【表彰チーム】

【個人表彰】

●優秀選手(11名)
No.1 星 莉音(ふたば未来学園高校) 
No.2 小森 愛結(JUVEN FC FLOR)
No.3 鈴木 萌彩(ふたば未来学園高校) 
No.4 平林 愛佳(JUVEN FC FLOR)
No.5 遠藤 綾乃(ふたば未来学園高校)
No.6 岡本 杏理(松商学園高校)
No.7 竹内 結希(松商学園高校) 
No.8 花岡 暖和(松本国際高校)
No.9 鈴木 咲羅(ふたば未来学園高校) 
No.10 小松 優月(松商学園高校)
No.11 高橋 優(ふたば未来学園高校)

画像1: 【個人表彰】

●敢闘賞
小松 優月(松商学園高校)

画像2: 【個人表彰】

●最優秀選手
遠藤 綾乃(ふたば未来学園高校)

画像3: 【個人表彰】

5位以下の大会全順位

5位:富山レディースサッカークラブ ブルー
5位:A.C.ROSSO ZAMA FIORE A
7位:戸塚FCガールズU-15
7位:大和シルフィード U-15
9位:AC館林フェリス
9位:FCスペラールtoda U15
11位:フィリアフットボールクラブ
11位:飛騨AG FC Dream
13位:ヴェルフェ矢板レディース
13位:富山レディースサッカークラブ ホワイト
15位:A.C.ROSSO ZAMA FIORE B
15位:足利・両毛ローザFC
17位:FHTペアーズレディースフットボールクラブ
18位:F-Monte
19位:バニーズ群馬FCホワイトスター
20位:JUVEN FC FLOR U-14
21位:秋田LFC
22位:福井 GO WEST LFC
23位:SCセレジェイラ長野レディース
24位:戸塚FCガールズU-15 2nd


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