上写真=無敗で首位を走るI神戸。女子アジアカップで活躍した成宮唯も所属する(写真◎WEリーグ)
■WEリーグ参加全11チーム
・マイナビ仙台レディース
・三菱重工浦和レッズレディース
・大宮アルディージャVENTUS
・ちふれASエルフェン埼玉
・ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
・日テレ・東京ヴェルディベレーザ
・ノジマステラ神奈川相模原
・AC長野パルセイロ・レディース
・アルビレックス新潟レディース
・INAC神戸レオネッサ
・サンフレッチェ広島レジーナ
初代王者へI神戸が独走中
ここまではINAC神戸レオネッサが、堅守で独走態勢を築き上げている。9試合を消化して勝ち点は25。隅田凜、長野風花、宮澤ひなたらを擁するマイナビ仙台レディースが勝ち点9差の2位。マイ仙台と同勝ち点で皇后杯優勝の浦和レッズレディース、同準優勝のジェフユナイテッド市原・千葉レディースらが3、4位につけ、日テレ・東京ヴェルディベレーザは5位と出遅れている。
I神戸は、第10節でマイ仙台と引き分けると、皇后杯では日テレ・東京ヴェルディメニーナにアップセットを許し、やや嫌な流れでウインターブレイクに入った。この2戦ではいずれも先制点を奪われている。リードを許すと揺るぎない堅牢を誇るI神戸が相手でも、先手をとることで勝利の可能性は広がる。
I神戸の指揮官として2010、2011シーズンに続き、復帰した今季もリーグで無敗を誇る星川敬監督のこと。杉田妃和がアメリカに移籍するなどしたが、ただ手をこまねいているわけがない。開幕前は守備の整備に時間を割いていたが、この中断期間では攻撃の選択肢も増やしてくるだろう。
対戦カードは、リーグ戦の直近3戦で無敗のちふれASエルフェン埼玉から、直接対決で詰め寄ろうと画策する4位の千葉L、2位のマイ仙台と続く。その後は、I神戸から最も勝利を奪っている東京NB、I神戸の守護神・山下杏也加からの得点数が上位のAC長野パルセイロ・レディース、アルビレックス新潟レディースの2チームが待ち受ける。
I神戸が、このまま後続を突き放して戴冠するか。それとも、歴史に残る大逆転劇が生まれるか。
菅澤、白木、井上のし烈な得点王争い
創設初年度のWEリーグでは「リーグ初」も多い。その中でも、高瀬愛実(I神戸)のファーストゴールは、塗り替えられない記録として、WEリーグの歴史とともに輝きを増すだろう。所属チームのI神戸も、連勝と連続無失点(どちらも8試合)はいったん途切れたが、連続無敗と連続得点は開幕以来継続(9試合)している。
前半戦全体(51試合)で、総ゴール数は110とやや少なく、得点王争いもまだ混戦模様だ。昨季のなでしこリーグ得点王・菅澤優衣香(浦和)、I神戸の無失点記録をストップした白木星(マイ仙台)、WEリーグで初めてハットトリックを達成した井上綾香(大宮V)の3人が5点でトップを並走している。ハットトリック達成者は井上だけで、そのS広島R戦での3ゴールが、1試合最多得点記録だ。
開幕から連続失点(9試合)が続いている新潟Lは、9ゴールを奪っており、守備の再編が浮上のカギになる。3得点のノジマステラ神奈川相模原は、9戦中4戦で相手を無失点に抑えており、ゴールへの道筋が上位へつながっている。12得点5失点で5位という東京NBは、1点差以内の接戦5試合で2分け3敗。競った試合で勝負を決めるゴールが欲しい。
サンフレッチェ広島レジーナは、WEリーグ創設を機に生まれた新チームで、クラブ初得点は上野真実が挙げた。ここから先、生まれる記録のひとつひとつがクラブの歴史を作っていく。現在、マイ仙台、AC長野とともに、開幕から9試合連続で警告、退場なし。EL埼玉は10試合連続で、この部門でトップに立っている。
毎節ごとに最多記録を塗り替えてもらいたいのが、観客数だ。第9節の浦和対マイ仙台(埼玉スタジアム)で記録された4,509人が、前半戦の最多入場者数。「平均5,000人の観客」を目標に掲げるWEリーグだが、ここまで51試合を終えて、まだ1試合も手が届いていない。新型コロナがいつ終息するか、先行きは不透明だが、そればかりをエクスキューズにするわけにもいかない。リーグと各クラブも、様々なトライをしている。
3月6日(日)の大宮V対N相模原(NACK5スタジアム大宮で13時キックオフ)からは、展示ブースで撮影もできる、WEリーグの優勝トロフィーツアーが始まる。また、4月23日(土)の東京NB対千葉L(味の素スタジアムで18時キックオフ)、5月8日(日)の新潟L対東京NB(デンカビッグスワンスタジアムで18時30分キックオフ)では、男子トップチームとのダブルヘッダー開催が行われる。
WEリーグ初年度も、残すところ半分。多くの観客の前で、国内最高峰の女子サッカーにふさわしいプレーを見せてほしい。
文◎西森 彰