6月5日のトリニダートトバゴ戦(@豊田スタジアム)、9日のエルサルバドル戦(@ひとめぼれスタジアム宮城)の位置づけは、あくまで今秋から始まるワールドカップ・アジア予選への準備だ。コパ・アメリカに臨むための準備ではない。その上で今回の2試合で指揮官は何を試し、確認するのだろうか。

上写真=翌日のトリニダートトバゴ戦に向け、日本代表は豊田スタジアムで練習を行なった(写真◎BBM)

久保の起用はあるのか? ないのか?

 トリニダートトバゴ戦の前日会見に臨んだ森保一監督は、初招集組や若い選手の起用について問われると、こう答えた。

「スタメンはまだ100パーセント確定していませんが、これまでのA代表に招集した選手たちをベースに考えたいと思っています。このあと、コパ・アメリカに参加するので、若い選手にはキリンチャンレンジカップでトレーニングをしながら、色々な経験のある選手から学び、次につなげてほしい」

 選手層の拡充、それに伴う世代の融合は変わらず進めていくことになるが、いま日本代表にとって最重要と考えているのはやはり、今秋に始まるワールドカップ・アジア予選に備えて、しっかりと戦えるチームを作ることだ。

 まだアジア地区の1次予選の結果が出ておらず、日本が参加する2次予選の組分け抽選も行なわれていない段階だが、先ごろ、FIFA(国際サッカー連盟)が2022年のカタール大会はこれまで通り、『32カ国が参加』という声明を出した。これに伴い、現行のスケジュール通りアジア地区予選が開催される。今年は9月(2日~10日)、10月(7日~15日)、11月(11日~19日)に予選を戦うことになるだろう。

 そして、7月、8月に代表メンバーを招集する機会はない。つまり、この6月シリーズ(キリンチャレンジカップ2試合)を終えると、次に日本代表が集まるのはワールドカップ予選のタイミングということになる。もちろん、テストマッチを戦えるかもしれないが、抽選の結果次第で、いきなり山場を迎えることもあり得る。だからこそ今回の試合の位置づけについて、指揮官は「日本代表にとっての強化の試合であり、個とチームの成長が見られるようにチャレンジ精神をもって戦いたい」と話した。

 監督の発言を踏まえると、新しい選手たちを6月のキリンチャレンジカップ2試合に出場させるとは考えにくい。そもそもテストマッチとはいえ、現在のルールでは23人しか登録できない。今回招集した27人のうち、4人がベンチ外になるわけだ。指揮官の言葉をそのまま受け取るなら、少なくともコパ・アメリカに参加する久保建英、中山雄太、大迫敬介ら若手には今回、A代表を肌で感じる機会を設けたということになる。はたして2試合のうちに彼らに出番は訪れるのか。

『唯一無二の大迫勇也』問題

 今回のキリンチャレンジカップは吉田麻也がシーズン終盤に肺炎を患った影響でコンディション不良のために不在だ。今秋からほぼ2年がかりで行なわれるアジア予選でも同様に、主力が欠場するケースはあるだろう。指揮官は特定の選手に依存するようなチームを望まず、誰が出てもレベルが落ちないチームを理想とする。だが、そういうチームになるための準備をここまでうまく進めてきたかと言えば、答えはノーだ。
 吉田不在の3月シリーズのコロンビア戦で昌子源と冨安健洋がコンビを組み、敗れはしたものの、守備面で一定の評価を得た。その一方で、攻撃面は依然として不安視されている。大迫勇也に代わる存在が見当たらないままだからだ。

 そもそも大迫勇也がもはや替えの利くような選手ではないのだから、別の攻撃の形(方法)を探る手もあった。しかし、ここまでは1トップ+2列目トリオ(主に中島翔哉、南野拓実、堂安律)の連動性をもってゴールを目指す形を求め続けている。アジアカップや3月シリーズで実際に起こったように、大迫勇也の不在時に攻撃が停滞する問題については棚上げされたままという印象だ。

 今回は岡崎慎司がロシア・ワールドカップ以来の代表復帰を果たし、さらに追加招集でスピードスター、永井謙佑を加えた。しかし、ともに大迫勇也とはタイプが異なり、2列目の攻撃力を引き出すことに長けたプレーヤーではない。指揮官はどのように二人を起用するのか。そして攻撃面でどんなトライをするのか。6月シリーズの注目ポイントの一つだろう。

 南野を1トップとして、中島、香川真司、堂安を2列目を並べる形はわずかな時間ながらも3月のコロンビア戦で試した。また、中島が不在だったアジアカップでは2列目に原口元気、南野、堂安が並んだ試合もあった。かつて指揮官は2列目の構成について、「(中島、南野、堂安の3人で)決まっているわけではない。常に競争」と話したが、2列目のメンバー構成に幅を持たせられるかどうかも気になるポイント。とはいえ、今回招集されたメンバーを見ると、2列目に入りそうな『新顔』は久保しかいないのだが……。 
     
写真◎BBM


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